御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
それで何度も訪問を重ねて、ようやくまともに話をしてくれるようになった。

♦︎♦︎♦︎

「大河くん。実はね、あの子の母親はこの屋敷のメイドだったんだ」

「はい」

そうだったのか。

「まぁ、だからね、その…身分の違いというかね」

言いづらそうにも話そうとしてくれている。
俺はそのまま黙って聞く。

「でもどうにも気持ちは抑えられなかった。それで、一晩だけ。一晩だけ夜を共にしたんだ」

「そして数ヶ月後、彼女は何も言わずに俺の前から姿を消してしまったんだ」

え…?

「俺はずっと探してた。もう彼女しか愛せないから。今は亡き親父に散々反対されてね。そんなにメイドと結婚したいなら社長になってみろって言われてね」

「俺は死に物狂いで働いたよ。うちは実力でじゃないと認められないからね。身内でも簡単に社長にはなれない」

そりゃそうだろう。
神楽だってそうだ。

「探してもなかなか見つからず、社長になった時にはもう12年もたってしまっていた。親父もその頃病気で亡くなって。俺が社長になるまでは頑張ったんだろうな」

え?
< 108 / 270 >

この作品をシェア

pagetop