御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない

「大河くん。春香はそれを見てた。母親の無念の死を。俺なんかと愛し合ったばかりに…」

親父さんは悔しそうに拳を握る。

「今でも俺をどこかのおっさんだと思ってる。自分はこんな家の娘じゃないと」

「いつも俺に対して線を引いてるんだ。年月で言ったらもう母親と二人で暮らしてた時と同じくらいここに住んでるけど、今も使いの者にお嬢様と呼ばれるたびに、違うと言い返す」

そうだったのか…

「そしてたぶん母親のようにならないと決めているのかもしれない。身分の違いで13年も結婚できず、辛い思いをしているのを見ていたから」

え?

「俺みたいなのとは結婚したくないと」

「俺みたいな?」

どういう事だ?

「自分で言うのもあれだが…まぁ俗に言うイケメンの金持ち。まさに君みたいなだろうね」

は?

「俺は春香も息子も可愛くて仕方ない。愛した人が唯一俺に残してくれた宝だ」

親父さんは鋭い眼差しで俺を見る。

「だから大河くんの気持ちはわかるが、春香が心を開いていないなら結婚は認められない」

ガンと鈍器で殴られた気分だ。

「でも…、春香が君に決めたなら俺は喜んで嫁に出すよ。あの子はなかなか拗らせてるから大変だよ大河くん」

親父さんはイタズラに笑う。

「それって…」

認めてくれてる?
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