御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
パパは篠宮グループという貿易会社の社長をしている。
仕事の内容はよく知らないけど、いわゆる御曹司で代々継がれてきたようだ。
この家もヨーロピアンなお屋敷で、春になると庭には色とりどりの花たちで埋め尽くされる。
手入れも行き届いていて、メイドもいて。
自分の家だけど、自分の家じゃないみたいだ。
こんなふうにナイフとフォークで食べる食事も今だに違和感しかない。
あのボロいアパートで円卓を囲んでママと2人で食べた生姜焼きや、鶏そぼろとか。
そういうのが食べたい。
「パパ。私ひとつだけしたい事があるの」
「お? なんだ?」
「お料理教室に行ってみたい」
「もう行きたい場所はあるのか?」
私は首を横に振る。
「これから探す」
「手伝わなくて大丈夫か?」
「大丈夫」
「それなら決まったら言いなさい」
「わかった」