御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
「泣いてない」

嘘ばっかり。

すると何を思ったのか春香は俺の顔を力いっぱいグイッと上げる。

「泣いてるじゃん」

「うるさい。見んな…。カッコ悪りぃ」

「寂しかった…?」

目が合い、ジッと見つめられる。

「寂しかった。本当は…」

俺は情けない顔で正直に言ってしまった。
春香は驚いた顔をする。
だよな。
お前は違ったよな。

「大河…。私もだよ。本当はもうとっくに限界だった」

「そう…なのか?」

春香は静かに頷く。

「離れてて平気なわけない。こんなに好きなのに」

俺はまた抱きしめる。

「そんな自分に気づかないフリしてただけなの。立っていられなくなるから…」

春香…

「寂しい思い、させてたか?」

春香は首を横に振る。

「違う。大河は本当に頑張って私に合わせてくれてたじゃん。これは私の問題」
< 135 / 270 >

この作品をシェア

pagetop