御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
"ありがとう"

サンドイッチも食べ終わった頃、近くから話し声が聞こえてきた。

"あの人、常務の奥さんだよ"

あー。ちょっとだけ気まずいな。

"常務、奥さんには笑うのかな?"

へ?
笑うわめっちゃ。

"モデルさんみたいだね。オシャレだし"

あらら。恐縮です。

"うん。なんかカッコいい"

褒めすぎ褒めすぎ。
ショップのお客さんだったら、服の紹介とかしちゃいたいわ。

その時電話が鳴る。

ん? 人事の五十嵐さん?
退職の手続きで何かあったかな?

「もしもし」

「あ、良かった! 篠宮さん! じゃなくて神楽さん!」

「どうかしましたか?」

「やっぱり戻る気はない?」

「いや…それは…」

「頼みたいのは販売員じゃないんですよ」

どういう事だ?

「研修の講師をお願い出来ないかと思いまして。神楽さんはニューヨークでも活躍していましたし、日本でも店長として立派に引っ張って頂いて。是非そのノウハウを講師としてスタッフに教えて頂けませんか?」

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