御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
俺はもうじっとしてられず、親父さんと春香の所まで駆け寄る。

「パパがっ」

春香も笑いが止まらないらしい。

「親父さん、大丈夫ですか?」

「うっ…大河くんっ…春香がっ…」

そう言って上を見たまま目に手を当てている。

「春香が?」

「俺をっ…初めて大好きって…うっ」

おいおい。
泣かせんなよ。
俺は春香を見る。

春香はてへっと笑う。

「ククッ親父さん。一緒に行きましょう」

春香と親父さんの両脇に立って腕を組んで、なんとか三人で歩く。

「パパ、ほら、しっかり歩いて! もう少しよ!」

「うっ…春香ー!」

親父さんはついに春香の名前を叫び抱きついた。

俺に。

いや、春香そっちな。
これ、俺な。

「ちょっと! パパ!」

春香が親父さんを俺から引っ剥がしにくる。

もう、てんやわんやだ。
< 257 / 270 >

この作品をシェア

pagetop