御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
「天音を…天音を助けてください!」
そう言って勢いよく頭を下げる。
「助ける? 天音に何かあったのか? 無事なのか? 連絡をくれないのはそういう事なのか?」
彼は監禁でもされているのかと思ったのか焦ったように聞いてきた。
私は横に首を振る。
そして天音の事情を話す。
ここはちゃんと話さないと。
華道が死ぬほど嫌いな事。
お婆様に逆らえない事。
華道を引退する為に知らない人と結婚しようとしている事。
そしてワインの時に私は何も考えずに軽く言い放った事。
「私あの時言ったんです。知らない人と結婚する前に一度くらいって…」
一夜限りのつもりで。
大事な初めてを。
天音はこの人に捧げた。
二人がどういう流れでそうなったのかは知らないが、彼は驚いた顔をしている。
「神楽さん。確かに天音は、あの日限りと思ってあなたを選んだかもしれない。でも…天音は、天音はあなたの事を今でも思ってる」