御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
神楽さんの瞳が揺れている。
迷ってる?

「天音はあなたとの思い出を胸に、自分の人生を投げ出そうとしてるの! 無理やり自分の気持ちを抑えて」

私はたたみかける。
迷ってる暇なんてないのよ!
時間がない。
もうすぐ天音は誕生日を迎えてしまう。

「天音は間違いなくあなたを愛してる。天音を救えるのは神楽さん、あなたしかいないの!」

天音のあの時の辛い気持ちを我慢して無理やり私に笑顔を向けた表情が浮かぶ。

「天音は、私にも心の中は話さなかったわ。でも全身であなたを好きと言っていた。天音は素直じゃないし、我慢するのが身に染みてしまってるから」

「もうすぐ、天音は誕生日を迎えます。急がないと、誰か別な相手を決められてしまう! お願いします神楽さん。天音には幸せになって欲しいの!」

お願い。
伝わって…。

神楽さんは一度深呼吸をした。
そして表情をギッと引き締め私を見る。

一瞬悪魔の顔が浮かぶ。

「話してくれてありがとう。あとは俺がなんとかする」

そう言って神楽さんは足早にその場を離れた。

私は後ろ姿に話しかける。

「あの! 私〇〇ビルのYUIの店で働いてますから! 天音の事で何か他に聞きたいことがあればいつでも!」

彼は振り向いた。

「YUI FUJISAKI? わかった。ありがとう。それじゃ」
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