御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
「天音っ…! 良かったね! 本当に良かった! おめでとう!」

グスングスンと涙が止まらない様子の天音。

「春香のおかげだよっ…私…何も言ってなかったのに…」

「私は何も。動いたのは神楽さんでしょ?」

私には何も出来なかったもの。

「でも…春香のおかげだよ。やっぱり」

「ありがとう。天音は意地っ張りだからね。好きなくせにあんな風に隠してさ」

どんだけの思いを飲み込もうとしてたんだか。

「…うん。もう大丈夫だから。お婆様の事も私勘違いしてたみたいでさ」

「勘違い?」

「そう。お婆様、ちゃんと私を思っててくれたみたい。一人暮らしをさせたのも、私が息を抜ける様にだった。
結婚も、引退した後の生活がちゃんと送れるようにって。
華道しかできないから私。
相手も、私に好きな人がいればその人とって考えてくれていたみたいなの」

「そうだったの…。良かった…。ちゃんと愛されてたね、天音」
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