御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
今日は手袋を忘れてしまった。

ハンドバッグを左肩にかけ、両手をポケットに突っ込む。

そしてスタッフ専用のビルの裏口から外に出た。

ブルっと寒さで肩が上がってしまう。
寒っ。

「春香」

名前を呼ばれた方に向けると、そこには横付けした車に軽く寄りかかりスーツの上からロングコートを羽織ったモデルさながらの佇まいをした悪魔がポケットに手を入れて私を見ていた。

は?

一瞬何が起こったか理解できなかった。

私はスッと目をそらし盛大に無視して駐車場の方向へ歩き出す。

「ちょ、おい」

腕を掴まれた。

「離して!」

私は思いっきりその手を振り払った。

「悪かったって」

なにが?

「何に対して?」

私を置いて他の女の所へ向かった事?
それとも、あのゴミを片付けなかった事?
女と一緒に仲良く車に乗ってた事?
金だけ渡してはい、さよならだった事?
"またな"なんて言って連絡先も交換しなかった事?
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