「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です
「あら、メアリーちょっと見て、ルンルンお嬢様が泣き出しそうよ」
「プッ、マーシャルったら、そのあだ名最高ね。でも、様なんてつけなくていいんじゃない? ねぇ、ルンルンちゃん、どーしたのー? 泣きそうでちゅかー?」
Mトリオはフィオナを取り囲み、くすくすと笑いそやす。
フィオナは深呼吸をして、頭の中にライアンの未来を思い浮かべて必死に堪える。

ふぅー、こんなことで怒ってはいけませんっ。 ライアンの未来はフィオ姉様と守ると約束したのですから。それに、もしかしたら既に婚姻届が出されているのかもしれません。間違いだとしても、何ヶ月かはここにフィオ姉様が滞在することになる可能性があります。
フィオ姉様が侮辱されることのないように、何とかしなければなりません!が、その前に旦那様に壊した物品の謝罪と報告と、弁償の相談をしたいのです。

「あのですね!」
「っ! な、なによ! ルンルン」
弱々しく泣いていると思っていたフィオナが、威勢よく話かけてきたことに驚きどもるメアリー。

「私はルンルンではありませんっ!というか、この際名前なんてどーでもいいです。とにかく、私は旦那様に報告に行きたいので、そこをどいてください!」
三人に囲まれても、怯むことなくフィオナは突き進もうとする。
「ちょっと、まちなさいよ! 何を報告するのよ、無駄だと言っているでしょ」
自分達のした事を告げ口されると焦るメアリーは、行く手を阻む。
「ですからっ、食器類のことや呼び鈴の紐のことです」

「呼び鈴? まずいわメアリー、細工したことが」
「しっ!マーシャル」
「メアリー、ここは私が」
ヒソヒソと三人は話し合うと、モアナがずいっと前に出る。
「紐が?」
「え?」
「だから、紐がどうしたの?」
モアナは無表情でフィオナに問いかける。
フィオナは躊躇った後正直に伝える。

「ちょっと……紐をちぎってしまって」
「どの紐を?」
「え?」
「だから、どの紐を? 何色の紐?何番目の紐? そもそも何個あって、色の並び順は? 何事も正確に報告が必要よ。 わからないの? はぁ、とりあえず、散らかしたここを掃除して 」

「うわぁ、モアナ、相変わらずきついわねー。でも、掃除はルンルンがしなさいよ」
「きゃはは、そうよ、そうよ」

メアリーとモアナの陰に隠れるように、マーシャルは相槌をうつ。
フィオナは強行突破を諦めて、トリオと対峙することにした





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