「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です
「では、答えられたら、そこをどいてくれるのですね?」
モアナはメアリーに目配せをして頷く。
「答えるのは一度きりよ」

フィオナは目を閉じて、部屋の状況を思い出す。ちぎれた紐は左から2番目だった。

「ちぎれた紐は左から2番目の茶色の紐です。 並び順は左から、黒、茶、紫、緑、黄緑、オレンジ、黄色、ピンク、白、水色、青、赤 です。12本ありました。」

しーんと沈黙が続く。
我に返ったモアナが反論する。
「は? 当てずっぽうに言ってもだめよ。」
「あーれ?私、よく聞こえなかったわー。ルンルン、もう一度言ってみなさいよ」
メアリーも慌ててモアナに加勢する。

「ですから、ちぎれた紐は左から2番目の茶色の紐です。 並び順は左から、黒、茶、紫、緑、黄緑、オレンジ、黄色、ピンク、白、水色、青、赤 です。12本ありました! 聞こえましたよね?」

フィオナは先程よりも大きな声で答える。

「ねえ、ちょっと、どうなの?正解なの?」
マーシャルはメアリーとモアナの顔を交互に見る。
「━━正解よ」
モアナは苦虫を噛み殺したような顔をしながら答える。

当然ですとばかりにフィオナは微笑む。一時的な記憶力には自信がありますから。お昼時の食堂の混雑をなめてはいけませんっ。いちいちメモなど書いていられません。どのテーブルにどの料理を運ぶのかなど、バッチリ記憶していますので。仕事の経験が役に立った、と安堵するフィオナ。

「は!まぐれよ! とにかく、ルンルン、ここをさっさと掃除してよね」
「そ、そうよね、行かせるわけないじゃない」
「約束を破るのですか?」
フィオナは負けじと反論する。
「はぁ? 誰が約束したのよ? そんな約束した私達? 」
メアリーは、二人に相槌を求める。
「知らなーい。きゃはは」
「はい、これよろしく」
モアナはガタンとバケツを置き、フィオナに顎で指し示す。
子供ですか⁉︎ よくこんな性格でお仕事が務まりますね
ここの管理はどうなっているのでしょう。色々と問題ありますね!ここはおとなしく、掃除をしてから考えましょう。フィオナはバケツに手を伸ばそうとした。

「掃除もせずに何をしているのです? しばかれたいのですか!」
刺すような視線を向けながら、ルークが近づいてくる。
ティーセットを乗せたワゴンを端に止めると、Mトリオめがけて進む。
「やば!」
脱兎の如くトリオは逃げ出した。
見事なまでの逃げっぷりですねーとフィオナは感心する。
「こら!片付けていきなさい!ペナルティです!次は問答無用で追い出します」
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