「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です

4アランside

✳︎✳︎✳︎
ルークがフィオナの元に戻ってくる少し前、アランは書斎で一人思い悩んでいた。
「失礼します。アラン様」
ノックと共にルークが入室してくる。
「アラン様、先程のメアリー達の件ですが」
「メアリー? あの侍女達のことか。まだいたのだな」
「まだとは?」
「お前が報告してきたではないか。勤務態度や行動に問題のある者がいると。だから、解雇すると書類に記入しておいただろ?」
アランは、書斎机に置かれた書類をパラパラとめくっていく。
「この辺りに置いていたはずだが」
「こちらのことですか?」
ルークは1枚の書類を引き出しから取り出す。
「なぜそんな所に? なんだこれは⁉︎ 」
アランはその書類を見て絶句する
「アラン様、今この邸にはあの性悪侍女達しかおりません。なぜなら、アラン様が解雇リストを記入していたからです。そのリストに記入された者達━━この邸のほぼ全員ですが、を解雇致しました。」

「な⁉︎ ルーク、お前何ということをしたのだ⁉︎」
「お言葉ですが、私は主の意志を尊重したまでです。内心では気でも狂ったかと思いましたが」
ルークは冷ややかな視線を向けつつ、めがねを片手でかけ直す。
「ならば、私に確認すれば済む話だろう。」
「確認したくてもできなかったのです!早急にと書いてありましたので、せめて皆に退職金は弾ませていただきました。 事後報告となりますが、よろしいですよね? どこにいるのかも分からない主を探すほど、暇ではありませんので。」

「ぐぬっ、そ、そうか、あの時だったのか……すぐに皆に詫びたい。 呼び戻すのを頼めるか?」
「まぁ、そんなことだろうと思いましたので、呼び戻すまでしばらく休暇を与えると言っておきました。
皆は婚約者様と二人きりになりたいのだろうと、ほのぼの出て行きましたよ。
 それに、この書類をすり替えたのもメアリー達でしょう。騎士団に引き渡すことも可能です。」

「いや、待て、今この邸には彼女達しかいないと言ったな? フィオーリ嬢が困るといけない。 呼び戻すまで様子を見よう。」
「甘いですねアラン様。」
「誰もいないよりはましだろう?」




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