「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です
「それに、困ったことになった……」
アランは項垂れるようにソファーへと倒れ込む。
「ルークもそこに座ってくれ」
「いえ、私はここで。それにフィオーリ様に軽食をお持ちする約束をしておりますので、厨房に寄らねばなりませんので、あまり長居はできません。」
「むむっ、そうか……」
「どうされたのです? あぁ、フィオーリ嬢のことですか?」

「━━いかった……」
「何とおっしゃいました? アラン様」
ルークはアランが腰掛けているソファーに近付いて問い返す。

「かわいかった」
「は?」
「彼女を見ただろう? 落ち着いた金色の髪、ほんのりピンク色に染まった頬、草原を思わせるような新緑の瞳。あまりにかわいくて、直視できなかった……」

ルークは、呆れ顔で聞いている。
「失礼ですが、アラン様はクリスティナ様の外見に惹かれたのですか? それならあのお二人は髪色以外はそっくりなのですし、フィオーリ様でも問題ないのでは? それに、あのフィオーリ様はもしかすると━━」

「ちがっ!だめだ!私はクリスティナ嬢の内面に惹かれたのだ。なのに……双子だと声もそっくりなのか?あのかわいい声で旦那様と呼ばれたのだぞ。思わず抱きしめたくなった。いったい私はどうしたらいい? 」

「あぁ、あの時は堪えていたのですね? 急に不機嫌になられたので、どうされたのかと。いったい私は何を聞かされているのです? 恋愛相談ですか?」

「不機嫌に見えただろうか? 彼女に誤解されただろうか? だとしたら最悪だ。昨日は、なかったことにしてくれと宣言したばかりなのに……」
「なかったことにしてほしいとは?」
「だからっ、つまり、私たちの結婚をなかったことにしてほしいと」

「は? は?正気ですか?1ヶ月も前に滞在を強要しておいて、やっぱりなかったことにしてほしいと宣言したのですか? どうしようもありませんね!
もちろん、フィオーリ様には丁寧に説明されたのですよね? まさか、何の気遣いもなく? 一方的に宣言されたのですか? アラン様、しばきますよ!」

「ぐぬっ。一気に言い切らなければ、気持ちが揺らいでしまいそうだったんだ。それに、元はと言えばお前が」

「私のせいだと?心外ですね。確かにフィオーリ様はかわいらしい方だとはおもいます」

「ルーク!まさか惚れてないだろうな?」

「アラン様と違って、やましい気持ちは抱いておりませんよ。それに、アラン様はクリスティナ様をお望みなのでしょう? 」
「確かにっ、そうだが、良からぬ虫がつかないようにフィオーリ嬢のことも守らねばならない! いくらお前でも私が認めなければダメだ」

「私も虫扱いなのですね。アラン様、この際クリスティナ様もお招きして三人で話しあわれてはいかがですか。」

「だめだっ!こんな情けない姿をクリスティナ嬢には見せたくない。私の想いを伝える為にも、誠実に向き合いたいのだ。」

「やれやれ、人の恋愛相談ほど面倒なものはないですね。おっと、もう時間です。続きはまたの機会に。失礼します」

「ルーク、まだ話が……」
ルークは足早にフィオナの元へと向かった。
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