「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です

13

ルークは邸に戻ると、アランの部屋に鍵がかかっていることを再確認する。メアリー、モアナ、マーシャルにアランがしばらく仕事で邸に戻らない旨を伝えた。続いてフィオナの部屋に足を運ぶ。
「フィオーリ、少しいいですか?」
何度かノックしたものの返事がない。勝手に部屋に入る訳にも行かないが、万が一倒れていたらいけない。鍵がかかっているかを確認するだけのつもりで、取手に手をかける。
「フィオーリ? いるのですか?」
何度呼びかけても返答はなく、部屋には鍵がかけられていた。メアリー達を問い詰め、邸中を探したけれど、フィオナは忽然と姿を消していた。

✳︎✳︎✳︎
ルークが街から戻る少し前、フィオナはアランを捜していた。どこにも姿が見えず、フィオナは渋々部屋へ戻ろうとしていた。
「何してるの?ルンルン、きゃはは」
「あなたは確か、マーシャルさん?」
「やだ、ルンルンお腹がすいたの?」

マーシャルはフィオナの顔を覗きこむように問いかける。

「違います。旦那様はどちらにいらっしゃるのですか?」
「あぁ、旦那様を探してるの? そうねぇ、教えてあげてもいいけど、タダという訳にはいかないかな、きゃはは。」
マーシャルは何がおかしいのか、フィオナを挑発するように笑いそやす。
「何してるの?マーシャル」
「あ、モアナ、メアリー。聞いて、ルンルンが旦那様に用があるんだってー」

マーシャルは後方からやって来たメアリーとモアナに並び立った。

「あー、ルンルン、旦那様にあなたの男のことは伝えたわよー。今更何を言っても無駄よ」

「メアリー、何の話?」
「あのね」
メアリーはマーシャルとモアナにだけ聞こえるように、ヒソヒソと囁いていた。

「メアリーさん、あの人とはそういう関係ではありません!でも、今はそのことではなくて、旦那様に急いで伝えなければならないことがあるのです。旦那様の居場所に心当たりがないのなら、自分で探しますから、もういいです」

フィオナはメアリー達と関わるのは得策ではないと判断して、その場を去ろうとした。

「ルンルン!知らないとは言ってないでしょ。こっちよ、案内してあげる」
メアリーは一人先頭に立って歩き出す。

「どうしたの?さっさと行って」
「きゃはは、よかったわね、私達が親切に案内してあげるわ」
フィオナの両側には、マーシャルとモアナがぴったりと付き添うように歩き出す。必然的にフィオナは逃げられず、渋々一緒に歩き出した。
いったいどこまでいくのでしょう?
フィオナは段々と不安になる。
いざとなったら揉み合ってでも、逃げ出そうと決心しながら。
「ここよ」
「え?ここですか?この部屋に旦那様が?」
「今よ!」
「ちょっと!きゃぁ」

フィオナは背中を押されて無理矢理部屋の中へと押し込まれた。ガチャっと鍵の閉まる音が聞こえる。取手を何度も回しても扉は開きません。

「ちょっと、あなた達、いい加減にしてください、開けてください!」
「じゃーねー、ルンルン」
「行こう」
「ばいばーい、きゃはは」
もう、本当にどうしようもない人達ですね。
フィオナはため息をつきながら、扉に背を預けて、ずりずりとへたりこんだ。



 
< 26 / 29 >

この作品をシェア

pagetop