「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です
フィオーリに成りすましたクリスティナは、壁にずらりと並ぶ呼び鈴の紐を見つめていた。


「こういう時は、どれを鳴らすのでしょう? 困りましたねぇ」


フィオーリに成りすましたクリスティナは、遠い昔に思いを馳せる。

我が家にも昔は、このような呼び鈴がありましたねぇ。
 
ここまで数は多くなかったけれど。

紐を引っ張ると、その紐が繋がった部屋の呼び鈴が鳴る仕組みだ。

厨房や洗濯室、使用人達の部屋へと繋がっている。


我が家では人数が減るにつれて、このタイプの呼び鈴は使われなくなった。


使っても意味がないからだ。

代わりに、手に持って鳴らすハンドベルタイプの呼び鈴は部屋に常備していた。


どうしても、困った時に鳴らしていた。

困ることとは、大抵、虫退治なのですが。


えぇ、えぇ、貴族の邸宅にも出るのですよ。

色々な虫達が。

まだライアンがいた頃は良かったのですよ。

お父様は役には立ちませんし。


今では、ほうきでササっと平然と掃くことぐらいはできるようになりました。

さすがに、捕まえたりは無理ですけれど。

フィオ姉様とは、お互い助け合う目的で慣らしていました。

「きゃぁ」とか「こわい」とか

令嬢らしく怖がっていたのですよ、フィオ姉様も私も。

ですが、見ないふりして一緒に虫と生活などできるはずがありません。

私も姉様も強くなったものです。

と、いけない、いったい何を考えていたのでしょうか。そうでした、呼び鈴でした。

そうですね、とりあえず順番に引いていきましょう。


フィオーリに成りすましたクリスティナは、


フィオーリに成りすましたクリスティナ━━フィオナと命名しましょう。


フィオナは左端の紐をそっと引っ張った。
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