「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です
おかしいですね、何の音も聞こえてきません。かすかに鈴の音が響いてくるはずなのですが。これだけ大きな邸ですもの、きっとかなり離れた部屋へと繋がっているのでしょう。けれど、いつまで待っても誰かが来る気配はしません。次は、隣の紐を引いてみましょう。

「固い、ですね、ええい」フィオナはグイッと紐を勢いよく引っ張る。すると、ブチッと紐が切れてフィオナはしりもちをつく。

「えっ?」
いたたたたた……お尻をさすりながらフィオナは立ち上がる。た、大変なことをしてしまいました。まさか呼び鈴を壊してしまうなんて……伯爵家で使用されているのですもの、きっと特注品に違いありません。おそらくこの紐も、どこかの希少な糸を使用しているはずです。弁償できる金額でしょうかフィオナはちぎれた紐を見つめる。持参金もなく、しかも間違いで?嫁いで
きて借金を背負うなんて、どんな顔をして旦那様にお詫びすればいいのでしょう。このままではフィオ姉様にあわせる顔もありませんっ。

「グーー」
と、とにかく、ここは正直にお伝えして、謝罪しましょう。可能であれば、こちらでこの際働かせていただき、弁償させていただきましょう。フィオナは、呼び鈴の紐を素早く順番に引いた。とにかく急いで報告しなければ!決してお腹がすいて限界が近づいているわけではありません


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