きっとそれは幸せな夢だった
「…あれ、あれって…、」


講義終わり、タバコでも買いに出ようと外に出ると

ちょうどビルの出口のところでひとり佇む彼女の姿があった。


「橋本さん、だっけ?」

「…!?あ、えっと、」

「あー、ごめんごめん、俺、数学担当だから。」


顔合わせたことなかったね、と俺の名札を見せると

彼女は小さな声で俺のフルネームを呟いた。


「どしたのこんなとこで。って、うわ、雨降ってんの?」

「は、はい。傘持ってないので兄に連絡したんですけど、返信こなくて。」

「そーゆーことね。じゃあさ、ちょっとそこのコンビニまで一緒に走ろうよ。」


俺もこれ切れちゃってさ、とタバコの空箱を見せると

びっくりしたような顔をして

俺の顔とタバコの箱を交互に見ていた。
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