立夏の初恋
今日、海に行くのは最後にしよう。

そう決めた。それで、もし仁科くんがいたら好きだったと伝える。

いなかったら、もうその時点で諦める———


迎えた放課後。


「……こう言う時に限って、いないんだね」


とっても悲しくなったけど、少しわかっていた気がしたから泣かないよ。

だってここで泣いたら、かっこ悪いもん……私だって、仁科くんみたいにかっこよく……


「……芹沢?」
「えっ……に、仁科くん!?」


まさかの、後ろから仁科くん。


「……なんで、泣いてんの」
「えっ、ち、ちが……ああ、花粉症……?」
「今真夏だけど」
「うっ……」
「誰かにやられた?」


私の頬に触れて、涙を拭ってくれる。そんな手が、温度が優しすぎてまた涙が溢れる。


「……ねぇ芹沢」
「な、なに……?」
「もし男に泣かされたなら、許さないんだけど」
「っ……に、仁科くんのせいだよっ……」
「……俺?」


ポカンとしている仁科くん。


「……私、仁科くんのこと好きなのっ……でも、仁科くん彼女いるらしいから……ショックで……」
「……ぷっ、何それ。彼女なんかいねぇし」
「……え?」


くすっと微笑んだ仁科くん。


「……ってか、本当に効果あった」


ボソッと何か囁いているけれど、それは聞こえない。


「嘘だよ、あれ。友達がふざけて流した噂。そもそも俺、芹沢以外興味ないし」
「……え!?」
「はー……やっと気づいてくれた?俺、毎日芹沢目当てでここきてたんだよ」
「そ、それって……」
「うん、好きだよ芹沢。いや、心優」
「えええっ……」


ぎゅっと抱きしめられてしまった。

どうやら、彼を笑わすことは大成功したらしい。


end
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