信心深い銀行強盗「ユーモア小説」

信心深い銀行強盗「ユーモア小説です」

ある所に信心深い銀行強盗がいました。
男はキリスト教を信仰していましたが非常に信仰心が強く若い頃洗礼を受けクリスチャンとなっていました。
大人になっても男は強い信仰心を持ち続け日曜日にはかかさず教会に行っていました。
そして三度の食事の前には必ず「主の祈り」をしていました。
男の信仰心はそれはそれは強く聖書を完全に暗記していました。
男の仕事は銀行強盗でした。
明日は犯行の決行の日でした。
男は手を組み神に祈りました。
「神さま。どうか明日の銀行強盗が成功しますように。アーメン」
翌日の銀行強盗は成功しました。
幸運なことにその日ちょうと隣りの街で別の銀行強盗が起こって犯人は犯行に成功して逃亡して警察官がほとんど駆り出されていたので警察官の人数が手薄になっていたので逃亡に成功したのです。
それでも一台パトカーが逃亡する彼の車を追いかけてきました。
男は猛スピードで逃げました。
ちょうど先に踏み切りが見えてきました。
電車が近づいてきてカンカンカンと音が鳴り踏切りの遮断機が降り始めました。
男は猛スピードで降り始めている遮断機を突破しました。
しかし追跡していたパトカーが踏切りの手前に来た時には遮断機は完全に降りてしまっていたのでパトカーの警察官は「チッ」と舌打ちしましたが止まるしかありませんでした。
こうして男はパトカーを振り切って逃亡することに成功しました。
男はその夜祈りました。
「神さま。銀行強盗を成功させて下さりまして有難うございます。アーメン」
しかし銀行員の証言からそして防犯カメラの映像から彼の容貌が犯人に似ていると警察に通報されました。
それで男は参考人として警察に呼ばれました。
男は前の晩神に祈りました。
「神さま。どうか私をお守りください。アーメン」
翌日男は警察官の取り調べを受けました。
警察官は眉を寄せながら男を見ました。
「あなたはどういう人がということを近所の人に聞きました。みなあなたは礼儀正しく日曜にはかかさず教会に行くと言ってとても銀行強盗をするような人間ではないとの発言ばかりだ」
そして警察官は続けて言いました。
「しかし人が良くて教会に行っているからといって犯罪を犯さないとは言いきれない。教会に行くことによって周りの人に善人を装っている可能性もあるからな。そこでだ。お前が本当にクリスチャンだというのなら聖書を暗唱してみろ」
警察官は聖書を開いて聖書のあらゆるヵ所をランダムに男に聞きました。
「マタイ伝3章24節を言ってみろ」
「ヨハネ伝4章21節を言ってみろ」
「コロサイ書3章11節を言ってみろ」
「イザヤ書5章31節を言ってみろ」
男はそれに全て正確に答えました。
警察官はうーんと唸りました。
「嫌疑不十分」
ということで男は釈放されました。
その晩男は神に祈りました。
「神さま。私を守って下さって有難うございます。アーメン」
こうして男は銀行強盗を続けました。
犯行ははれずに男は80歳まで長生きし家族に見守られながら安らかに死んでいきました。

平成30年5月3日(木)擱筆
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