私と彼の3年間

夕焼け空

あれから安静が解除された日私のところに先生が休憩時間車椅子を押してやってきて

『吉川さん!屋上いきますよー!!』

と元気に言う

「本当に来てくれたんですね。」

『当たり前じゃないですか。約束したでしょう?安静解除になった日に連れてくって。』

「ありがとうございます。」

『まだお腹の傷痛くなったりすると思うからそんなに歩かない方がいいと思って車椅子持ってきたよ。』

そう言って私のベッドの横に車椅子を近づける。

『さぁ、乗ってください!』

久しぶりにベッドから起き上がって立ってみると体が重くなったようだった。

「よいしょっと」

先生に支えてもらいながら車椅子に座ると

『じゃあいきますよー』

と先生が車椅子を押して屋上まで連れてってくれた。

「わぁ!夕焼けだ!」

『良かったー!まだ日が沈んでなくて!今日は絶対に吉川さんに見せたかったんです』

「ありがとうございます。先生は優しいですね。」

『優しくなんてないですよ?休憩時間したいことして自由に過ごしてるだけですからね』

「私と夕日みることがしたいこと…?」

『そうですよ、僕と吉川さんは"空友"です』

「空友?」

『あの日から何度か一緒に同じ空を眺めた友達です。』

「先生と友達になれるなんて、医師の友達は初めてです。」

『僕も患者さんと友達になったのは初めてですよ。』

「夕日、沈んじゃいますね。」

『そうですね…沈んだらお部屋まで送りますね。』

「明日も見たいです!」

『うんうん、雨じゃなかったら迎えに行きますね。』

毎日こうやって先生と空を見れるなら辛い治療も頑張れる気がする。
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