私と彼の3年間

副作用の辛さ

今日から抗がん剤治療が始まった。

薬の投与が終わったあとにお昼ご飯だったんだけどなんだか吐き気が止まらなくてご飯も食べれなかった。

もしかしたら今日から屋上も行けないかもと思い始めた。

ずっと横になったまま過ごしていると休憩時間の先生がきた。

『吉川さん?体調は…悪そうですね。』

「先生…抗がん剤ってこんなに辛いんですね」

『そうですね…がん細胞だけじゃなくて正常な細胞にも影響がありますから…』

「でも、これを受けることで治る可能性もあるんですよね、私頑張ります。元気になって仕事に復帰するんです!」

『素晴らしい心持ちですね。今日は屋上じゃなくてここで話しましょうか。』

「はい、ありがとうございます。」

『吉川さんは働くのが好きなんですか?』

「働くのが好きというか、ずっとやりたかった仕事ができるようになったばかりだったんです。」

『そうなんだ。どんな仕事?』

「飲食業界の会社で商品開発の仕事してました。」

『商品開発の仕事ですか〜…食べるの好きなんですか?』

「はい、もちろんです!美味しいもの食べる事が生きがいです。」

『何が好きなんですか?和食?イタリアン?中華?』

「私が好きなのは…全部です!!」

『全部ですか〜食いしん坊なんですね』

吹き出しながら先生が言う

「好きなんですもん!悪いですか!」

『すごくいいと思います。』

「こんなに食べるの好きなのに、今は食べられない状況です。悔しすぎます!目の前に食べ物があるのに!」

『食べれないの辛いですよね、でもさっきより少し元気になった気がします。』

「それは…先生が来てくれたからですよ。」

『…可愛いこと言いますね、吉川さんが退院したら一緒にごはんでも食べに行きましょうか。』

「え!?いいんですかそんな、患者とプライベートで会うとか!」

『吉川さんは僕の患者じゃないですもん。というか!患者以前に友達なんですけど?』

『吉川さんは友達だと思ってないんですね、悲しいです。』

先生はふざけて泣き真似をする
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