私と彼の3年間
抗がん剤の治療を始めて数日経っても私の体調はずっと悪いまま変わらなかった。

何か食べなきゃと口に入れては吐いて、鏡には青白くやつれた顔が映る。

今まで自分の顔を可愛いと思ったことなんてなかったけど正直この顔貌の変わりようはショックだった。
こんな酷い顔誰にも見せたくない。

『吉川さん入るよー』
コンコンコンとノックしながらドア越しに私に声をかける先生。

急いで私は枕を顔に押し当てた。

『失礼しますー…吉川さん?どうしました?枕に顔押し当てて…』

「気にしないでください」

『…わかりました。吉川さんの顔みてお話できないのは寂しいですけど、今日はそうしましょうか。』

「先生ありがとうございます。」

『吉川さんがしたいようにしてください。僕はどんな時でもそれを受け入れますから。』

そんな温かい声を聞いて先生にこの辛さを吐き出したくなった。

「抗がん剤始めたら、副作用が辛いのは知ってたし、覚悟してたつもりだったんです。」

『うん。』

「でも、好きな物も食べれない、血色もなくなって、どんどんやつれて変わってく顔。鏡見る度に嫌になっちゃって。こんな顔誰にも見られたくない。」

『うん。』

「これから髪も抜けちゃったりするのに、今の時点でこんなんじゃだめだよね。辛くても生きれるならって治療すること決めたのに、こんなに辛いなら死んじゃいたいって気持ちもある。」

『治療辛いですよね。でも、吉川さんはだめなんかじゃないですよ。』

「え…?」

『あなたが今辛いのは、一生懸命生きるために病気と闘っているからでしょう?あなたは誰よりも頑張っていますよ。私が保証します。』

「先生…」

涙が溢れる。

辛くて死にたくなる時いつも先生に支えられてるなって感じる。

必ず傍に来てくれて言葉をかけてくれる。

先生という存在が傍にいてくれるだけでも闘病生活を送る私はラッキーなんだ。

もう少し、もう少し頑張りたい。
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