私と彼の3年間

退院、それから

朝スマホを確認すると先生から返信が来ていた。

『こちらこそよろしくね。』

『今日も行くから待ってて。』

見た目は相変わらずだけれど体調も落ち着いてきた私。

朝食後主治医から今週末退院の許可が出た。

退院してもしばらくは仕事は休むよう言われているけれど外に出れるのが嬉しかった。

その日の夕方

『退院許可出たんでしょ?よかったねー!』

今日もほわーっとした雰囲気をまとう先生が病室を訪ねてきた。

「先生、うん。ありがとう。」

『今日は屋上いけそう?体調も落ち着いてきたかな。』

「はい!行きたいです!」

『無理しないで体調悪くなったらすぐ言ってくださいね。じゃあ行きましょう!』

「はい!」

退院したらもうこうやって先生と歩いて行って屋上で空を見ることもなくなってしまうのかと思うと少し寂しい。

「先生とさ、こうやって空見れることが唯一の入院生活の楽しみでした。」

『楽しみになれてたのなら良かった。』

「退院してから先生と食事に行くのも楽しみにしてるよ!」

『うん。絶対誘うからね。これからも吉川さんの心の支えになれたら嬉しいよ。』

きっと先生にとっては何気なく言った言葉なのだと思う。それでも期待して胸が高鳴る私がいた。

私は多分先生のことが好き。
でも先生にとって私は患者の枠は超えていても友達。

それ以上になることはきっとないのだろうと思うとすごく胸が苦しかった。

「先生、ありがとう。約束だからね!」

『うん、約束だよ。』

先生は微笑んで私と指切りをした。

退院してからも先生と会えるだけで私は恵まれていると思う。
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