私と彼の3年間
「そっか、それは辛いね」

深くは聞かず彼はそう言った。

その後少し沈黙が続いたけどむしろそれが良かった。

彼は隣に座ってただ一緒に夕日を眺めていた。私はただ静かに泣いていた。

しばらく経って夕日がほとんど沈んだ頃、少し気持ちが落ち着いた。

『あの、あなたは?』

このタイミングで尋ねるのはどうかと思ったがこの人のことが知りたかった。

「僕はここの小児科で働いている医師で大木 陽と申します。みんなからは陽先生って呼ばれてます。」

小児科の先生だったのか、優しい雰囲気がきっと子どもたちに人気なんだろうなと思う。

「僕いつもここで休憩してるんだ。ここで空を眺めるのが好きでね。」

『そうなんですね、お邪魔してしまってすみません。』

「邪魔なんかじゃないよ。またおいでよ。…って僕の場所でもないけどね」

ふわっとした雰囲気の"陽先生"に少し心が和む。

「君は患者さんだよね…?日も落ちて寒くなるし病室まで送るから一緒に帰ろう。」

そう促されて病室へ帰ることにした。

「どこの病室?」

『婦人科病棟の503号室です。』

「婦人科かぁ、お隣の病棟だね。廊下とかですれ違うかもね。」

『小児科お隣なんですね。入院してきたばかりでまだ病院のこと分からなくて。』

そんな話をしながら歩いていたらあっという間に私の病室に着いた。

「吉川 花さんね…よし!覚えた!またね吉川さん」

彼は私のベッド上に掲示されている名前をみてそう言うと帰って行った。
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