「生きること」
わたしは気分転換に外に出ることにした。
部屋に鍵をかけ、一階まで駆け下りる。
ふと一階の窓口の方に目をやると、クロダさんが無表情で座っていて、わたしは軽く会釈すると小走りで窓口の前を通り過ぎ、外へ出た。
外は先程と変わらず薄暗かった。
ここは、朝や昼、夜や天気というものもないんだろうなぁ。
路地裏を歩くのは怖かったので、わたしは住宅街を散歩することにした。
その前に自分のアパートの外観を確認した。
どのアパートも外観は一緒。
何か目印がないかを探した。
すると、出入り口の塀のところに表札があり「クロダ」と書かれていた。
クロダさんが管理しているアパートだからだろうか。
わたしは他のアパートの表札も確認してみた。
アパートを囲むの塀には、どのアパートにも表札があり「クロサワ」「クロイ」「クロイワ」など、共通して「クロ」と書かれた名前ばかりが書かれていた。
死神は、みんな名前に「クロ」が付いてるのかなぁ。
そんなことを考えながら、わたしは住宅街を散歩するように歩き出した。
同じアパートばかりなので、景色は変わらない。
すると、後ろから「くる実さん」とわたしを呼ぶ、聞き覚えのある優しい声が聞こえてきた。
振り返ると、そこにはクロキさんが立っていて、わたしに向かって微笑んでくれた。
クロキさんの微笑みを見ると、やはり心が和む自分がいた。