「生きること」
わたしは、しばらく住宅街を出ることなく過ごした。
やはり路地裏は怖いし、公園も行く気になれない。
ただ、たまにクロキさんに教えてもらった秘密の湖には、一人で行っていた。
今日も湖に向かって歩き出す。
森に辿り着いたが、そよ風が吹くこともなく、木々たちも揺れてくれない。
やっぱりクロキさんは特別なんだなぁ。
そんなことを考えながら、湖への道を歩き、緑の香りを堪能する。
しばらく歩くと、湖に辿り着き、わたしは湖の手前で体育座りをした。
何度見ても綺麗な湖だ。
そんな湖を眺めていると、後ろから「みーつけた。」と声が聞こえた。
わたしは驚き、後ろを振り返ると、そこには敬ちゃんが立っていた。
「ついて来ちゃった。」
そう言って、敬ちゃんは申し訳なさそうな表情を浮かべ、頭をポリポリとかいた。
クロキさんから教えてもらった秘密の場所なのに、敬ちゃんにバレてしまった。
「ストーカー。」
わたしがそう言って、ムッとした表情をすると、敬ちゃんは「ごめん。」と謝った。
仕方ないので、わたしは自分の横をポンポンッと叩くと、敬ちゃんに座るように促した。
敬ちゃんは「失礼します。」と言いながら、わたしの隣に腰をかけた。