「生きること」

その後から、わたしは敬ちゃんと一緒に過ごすことが増えた。
ほとんど住宅街から出ることなく、お互いの部屋を行き来し、他愛もない話をして笑ったり、たまに散歩でクロキさんに教えてもらった湖に行くこともあった。

しかし、もちろんあの大きな満月の場所は教えていない。
敬ちゃんにさえ、秘密だ。

今日は敬ちゃんの部屋で過ごしていた。
わたしが敬ちゃんのベッドで横になり、敬ちゃんはテーブルの前で胡座をかき、テレビを観ていた。

「そういえばさぁ、最近クロキさん居ないね。」
わたしがそう言うと、敬ちゃんはテレビから視線を動かさないまま「最近、巡回で忙しいみたいだよ。」と言った。

「そうなんだぁ。」
「何か、急にここに来る人たちが増えたんだって。」
「へぇ〜、何でだろう。」
「分かんないけど、みんな色々あるんだろうなぁ。でも、クロキさんが大変だよね。」

クロキさん、忙しいんだぁ、、、。
久しぶりに会いたいなぁ。

そんなことを考えていると、敬ちゃんの視線を感じた。
ふと敬ちゃんの方を見ると、敬ちゃんがニヤニヤしながらこちらを見ていた。

「今、クロキさんのこと考えてたでしょ?」
敬ちゃんの言う事が図星でわたしは苦笑いを浮かべた。

すると、敬ちゃんはわたしの反応に「やっぱりね。」とドヤ顔をして見せたのだ。
< 27 / 69 >

この作品をシェア

pagetop