「生きること」
開いたページには、何も書かれていなかった。
他のページもペラペラとめくってみたが、何も書かれていない。
わたしは不思議に思いながらもその本を閉じ、ふとを顔を上げた。
すると、ハッと息が詰まりそうになった。
そこは、さっきまでわたしが居た場所とは違ったからだ。
雰囲気としては、暗い路地裏のような感じだった。
「え、、、どこ?」
そう呟くと、細い道の向こう側から、ボロボロの焦げ茶色のジャケットを羽織った50〜60代くらいの白髮の男性が歩いてきた。
半開きの口元から見えるのは、ボロボロの歯。
わたしの目の前で止まると、下から舐め回すようにニヤニヤしながら見てきて、わたしは後退ったあとで男性から逃げるように走り出した。
どこに向かって居るのか分からないが、とにかく走った。
途中途中で何人かの人とすれ違ったが、共通して言えるのはみんな暗い顔をしているということ。
「もうどうでもいい」そんな声が聞こえてきそうな顔をしていたのだ。
もう逃げ切れたかな?というところでゆっくり足を止め、膝に手を付き、上がった息を整えようとした。
「何なの?ここ、、、」
すると、今度は顔を上げると、30代前半くらいの男性と目が合った。
いかにも茶髪でちょっと一昔前のチャラ男という言葉が似合う男性だった。
その男性はわたしの顔を見たあと、視線を下げ胸元あたりを見ると「ん、ちょっと違うな」と言って、去って行った。
は?何なのよ、もう、、、
そんなムッとしていられたのもつかの間。
さっきのボロボロの焦げ茶色のジャケットの男性が追いついて来たのだ。
わたしは慌てて、再び走り出そうとした、そのときだった。
「こっち」
そう言って、誰かに手首を掴まれ、ボロボロの焦げ茶色のジャケットの男性から逃げるように走り出した。