「生きること」
「くる実さん」
クロキさんは、優しい声でわたしの名前を呼んだ。
わたしは「はい。」と返事をした。
「僕、死神の仕事を引退しようと考えてるんです。」
突然の報告にわたしは驚きを隠せず、「えっ?!」と大袈裟に驚いてしまった。
「でも、死神を引退するのは、簡単なことじゃないんですよね?」
「そうですね、簡単ではないです。そして、引退するだけでなく、、、死神から人間に生まれ変わろうと思ってるんです。」
「えっ!そんなことが出来るんですか?!」
わたしの問いに、クロキさんはコクリと頷き、そのあとで「ただ、死神を引退するよりかなり難しいんです。」と言った。
「そうですよね、、、。」
わたしは、なぜクロキさんがその選択をしたのかは分からないが、死神を引退してくれるのは嬉しかった。
優しいクロキさんに、この仕事はして欲しくなかったからだ。
クロキさんにはいくら仕事とはいえ、人を殺めて欲しくなかった。
「でも、僕頑張ります。頑張って死神を引退して、人間を目指します。そのときは、くる実さん、、、」
クロキさんはそう言って何かを言い掛けると、わたしの両手を取って握り締めた。
そして「僕が人間になれたら、僕とお付き合いしていただけませんか?」と言った。
わたしはクロキさんの言葉に自分の顔から耳まで赤面していくのが分かった。