「生きること」

「この方は、桐屋くる実さんです。まだここに来たばかりなので、色々教えてあげてくださいね。」
クロキさんがわたしを紹介してくれたので、わたしは舞さんに向かって「よろしくお願いします。」と言い、軽くお辞儀した。

「くる実さん、こちらは渋宮舞さん。ここに居る期間はそこそこ長いので、分からないことがあったら聞いてみるといいですよ。」
クロキさんはそう言うが、舞さんは明らかにわたしを見て不服そうな表情を浮かべていた。
そんな顔をされたら、とてもじゃないが分からないことがあっても聞けやしない。

すると、クロキさんの左腕手首に付いている時計のようなものが赤く光り出した。
クロキさんはそれに気付くと「ちょっと呼ばれたので行ってきますね。くる実さん、アパートまで案内出来ず、すいません。」と言い、そのあとで「舞さん、くる実さんを住宅街まで案内していただけますか?」と舞さんに向かって言うと、クロキさんは「行ってきます」と微笑み、スッと姿を消した。

舞さんと二人残されたわたし。
微妙な雰囲気が流れる。

舞さんはわたしを睨みつけると「クロキさんに近付くのやめてよね」と言い残し、さっき来た道を戻って行った。

一人残されたわたしは、とりあえずクロキさんが向かおうとしていた方向へ歩き出した。

また変な人に遭遇したらどうしよう、、、
そう不安に思いながら歩き出してすぐに、街灯が並ぶ住宅街らしきところに辿り着いた。
そこに並ぶのは、全て同じ外観の3階建てのアパートばかり。
電気が点いている部屋もあれば、明かりのない部屋もある。

どこに行けばいいんだろう。
わたしは迷いながらも、恐る恐る空いていそうな部屋を探し歩き出した。
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