「生きること」
すると、わたしが歩く向こう側から同じ年齢くらいの男性が歩いて来るのが見えた。
男性を見ると身体が萎縮してしまうようになったわたしは、来た方向へ戻り逃げようとした。
わたしが早足で歩いていると、後ろから「あのぉ〜」という声が聞こえた。
さっきの男性だろう。
わたしは聞こえないふりをして、更に早足で歩みを進めた。
「おーい!ちょ、待った待った!」
男性の声が近付いてくるのが分かり、わたしは怖くなって走り出そうとした。
すると、後ろから肩をポンッと優しく叩かれた。
わたしはハッとしながらも、ゆっくりと足を止め振り向いた。
そこには、さっき向こう側を歩いていた男性が立っていた。
「逃げなくて大丈夫だよ。俺は何もしないから!」
そう言うと、男性は何もしませんアピールで両手を上げた。
その男性は、センスが良いとは言えない赤いパーカーを着ていて、髪の毛がもっさりしていた。
「俺を見て逃げるってことは怖い目に遭った?大丈夫?」
心配そうにわたしに問いかける男性に、わたしは首を立てに振った。
「さっき、変なおじさんに追いかけられて、、、」
「あー、そっかそっか。それは怖い思いしたなぁ。」
「でも、クロキさんに助けていただきました。」
わたしがそう言うと、心配そうな顔から男性の表情がパッと明るくなった。
「クロキさんに助けてもらったのか!それは良かった良かった!」
そう言うと、男性はにっこり笑った。
「クロキさんって、ここでは有名なんですか?」
わたしがそう尋ねると、その男性は「当たり前じゃん」と言い、続けて「ここを管理してる死神だからね。」と答えた。