社内恋愛

仕事に目覚める

仕事に目覚める

「おい拓也、品質の仕事をやらないか」
年配の長居さんが、声をかけてきた。
拓也はこれまで、工員のような仕事しか経験がなかった。
といっても、現場での製品の検査であった。しかし、一応・身分は品質管理部である。工場にとっては、命の部署である。
拓也は朝から夜まで自分で、フォークリフトを使って製品を降ろし検査をやっていた。
一日の仕事が終わると、その日の日報を事務所にいる早苗に提出する。拓也は毎日、早苗と顔を合わせ、会話するようになった。
「それじゃ、帰ります」
「えっ、もう帰るの」
拓也は、‪5時‬の時報と共に早苗に日報を渡し退社していた、‬‬
これからは、閉店まで、パチンコである。
今日は、朝から事務所に、早苗がひとりいた。
「拓ちゃん、焼肉行かない」
「じゃあ、今度、招待するよ」
「うん・ありがとう」
「じゃ、来週の土曜日に」
「OK」

拓也は、長居さんからいろいろ仕事を同行して教えてもらっていた。
毎日、残業の日々が続いていた。
今日は、早苗さんとの約束の日である。
朝から、事務の女性が休んでいた。お父さんが亡くなったそうである。
拓也は、‪4時頃‬、早苗に用事を作って事務所にやってきた。‬‬
「早苗さん、今日大丈夫」
「今日は、佐藤さんのお父さんがなくなってたいへん。私、凄く行きたいけども今日は駄目。キャンセル」
拓也は、葬式じゃ仕方がない。
しかし、この時、ふたりの運命は、変わっていたかもしれない。
数日後
「拓ちゃん、最近、どうしたの」
早苗は拓也に尋ねた、
「最近、仕事が面白いんだ」
「がんばれ」
よく、会話をしたり、お互い、誘いもかけるのだが、一向に恋は進展しそうになかった。
しかし、拓也は、生まれてはじめての、やりがいというものを見つけたようであった。

< 5 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop