ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 少しだけ頭がクラクラする。今日は妙に、酔いが回りやすい。

 ガクくんが、心配そうに顔を覗き込んできた。

「彩女さん? 大丈夫ですか?」
「少し、飲みすぎたかも」
「すみません、僕が考えなしに注いでしまったから。そろそろ帰りましょうか。送りますよ」

 ガクくんは立ち上がり、新しいグラスに水を注いで出してくれた。

 どうしてだろう。まだまだ帰りたくない気持ちが強い。だけど時間も時間だし。いくら明日は休みだといっても、あまり遅くなりすぎるのもよくない。

 もらった水を飲んでから、ガクくんと一緒にお店を出た。

 冬の気配を強く感じる風が、火照った頬を優しく撫でる。

「僕の腕、つかんでいていいですよ」
「大丈夫よ」
「本当に?」

 足元がおぼつかない私を心配するガクくん。
 酔いが回りやすいのは、仕事の緊張感から解放されたせいもあるのかな。疲れが溜まっていたし。

 だけど、ガクくんの隣は心地いい。爽やかな風が吹く青空の下の草原で、思いきり大の字になって寝転んでいるような感覚だった。

 お店から自宅マンションまでは、歩いて10分かからない程度。その間ガクくんとなにを話していたのか、あまり覚えていない。気がついたら、もう家の前にいた。

「玄関前まで、ご一緒しますよ」

 私がフラフラしているから、途中で倒れないか心配しているのかな。
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