ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 まだ頭の中が混乱したまま、ガクくんに洋服を持っていく。

「タオルと洋服、置いておくね」

 バスルームのドア越しに声をかけると、いきなりそのドアが開いて、ガクくんが上半身を覗かせた。

「ど、ど、どうしたの?」
「シャンプー、使わせてもらってもいいですか?」
「あ、う、うん。ボディソープとか、そこにあるものは全部使っていいから。あと、ドライヤーも洗面台に置いておくね」
「ありがとうございまーす」

 濡れた髪に濡れた体で、いたずらっぽく笑う。

 ……絶対、わざとでしょう。目のやり場に困った私が慌てて顔を背けるのを見て、楽しんでいるんだ。

 なんだか、とてもリラックスしている感じだし。彼は、こういうのに慣れているのかしら。

「はぁー気持ちよかった。服、ありがとうございます。サイズぴったりですよ」
「そ、そう。よかった」

 髪を乾かしてリビングへ入ってきたガクくんは、とてもご機嫌な様子。さっぱりして上気した顔にスウェット姿というのが、なんともいえないあどけなさで……まぁ、私と同じサイズなのは、少し複雑な感じがするけれど。

「ていうか……」

 ガクくんが、キョロキョロと部屋を見回す。

「彩女さん、また引っ越しでもするんですか?」

 ……あちこちに段ボールが積み上がっているこの部屋の惨状を、見られてしまった。

 いや、部屋に連れ込んだんだから、見られて当たり前なんだけど。後悔をしても、時すでに遅し。
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