ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「涼介さん。いろいろと心配してくれて、本当にありがとう」

 ガクくんは、マスターへ深々と頭を下げる。

「信頼を裏切るようなことはしない。彩女さんが嫌がることも、絶対にしない。だからしばらくは、僕の好きにさせてください。お願いします」

 とてもとても、真剣な表情だった。やっぱりガクくんは、ただ人に依存したいわけじゃない。この顔を見て、そう確信した。

 マスターもそれを感じたのか、しばらく無言でガクくんを見つめたあと、諦めたように小さく息をつく。

「……分かった。彩女さんと一緒なら、堕落した生活にはならないだろうし」

 ガクくんの瞳が、一気に輝いた。コロコロと表情が変わって、本当に面白い。

「でも条件がある。絶対、彩女さんに迷惑をかけないこと」
「もちろん、約束する」
「それと週に2日でもいいから、店を手伝うこと」
「えぇー!」

 あ、今度は駄々っ子みたいな顔になった。
 だけど、そうよね。家に閉じこもるだけだと、彼のためにならないもの。

「それは私も賛成です。まだ若いんだし、社会勉強をしないと」
「でも」
「私の言うことは、なんでも聞くんじゃなかったの?」
「……分かりましたよぉ」

 この子は本当に、23歳なのかしら? 口を尖らせて不満げな表情を見せるその姿は、まるで幼い子どもみたい。
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