ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 結局、ガクくんコーデは一式すべて購入。それ以外にも彼のアウターとルームウェアを2着ずつと、靴下や下着など諸々を買った。

 そしてフードコートで昼食を済ませたあとは、ガクくんが必要だという調理器具と工具セットをホームセンターで買って、さらにスーパーで食料品の買い出し。

 大量の荷物を抱えて帰宅してからは、配送してもらった机の組み立てをした。

 ガクくんはたいして説明書も読まず、買ってきた工具でサクサクと作業を進めて、あっという間にパソコンデスクを完成させる。その仕上がりは完璧で、本当に器用だと感心するばかりだった。

 それからガクくんは、夕食の支度にとりかかる。今日はキャベツが安かったから、ロールキャベツにするみたい。

 だけど、朝からずっと動きっぱなしよね。疲れていないのかしら。

「できましたよぉー」

 エプロン姿のガクくんが、いそいそとお皿を運んでくる。なにこれ。すごく幸せなんだけど。

「わ、美味しそう」
「彩女さんの、お口に合うといいんですけど……」

 本格的な料理を披露するのは初めてだからか、ガクくんは少し緊張した面持ち。だけど私には、彼の料理は自分好みの味だという確信があった。
 だってあのフレンチトーストは、いままで食べた中で、一番美味しかったから。

「それじゃ、いただきます」
「はーい、召し上がれー」

 不安と期待が入り混じったような瞳に見守られながら、ナイフでロールキャベツを切って、口に運ぶ。
 ……ほら、やっぱり。私好みの、優しい味。
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