あなたの想いを知りたいから
第五話
●細間の回想。小学生の細間がランドセルを背負い、廊下を歩いている。
●細間のもとへ複数の女子が駆け寄ってくる。
地の文「細間湯睦真は、幼少期からよくモテた。いついかなる時も、女子に囲まれていた。細間湯睦真は、どの女子とも対等に接していた。ある日、教科書を忘れたときに、試しにあざとくお願いしてみたら、喜んで見せてもらえたので、以降お願いするときは、あざとくやることにした。ちなみに兎唯は、そんな細間を、ずっとうらやましく見ていたらしい。そんな細間であったが、しっかり誰かに恋したことはなかった。…あの日までは」
●高校。
先生「細間。すまないが、この空箱を事務室まで戻しておいてくれないか?」
●先生。教室においてある段ボール箱を指さす。
細間「これ、全部ですか?」
先生「ああ。また使うから、畳まず持ってこいって」
細間「しかも箱のままですか…」
●細間。段ボール箱を一つ抱える。先生が残りの段ボール箱を上に乗せる。
先生「空箱とはいえ、くれぐれも気をつけろよ」
細間「は〜い」
地の文「そのお願いを引き受けたのが、すべてのきっかけであった」
●段ボール箱を抱えて階段を降りる細間。
細間(いやこれ、思ったより大変だな。安全に運べる自信ないかも…)
●細間。階段の上で足を滑らせる。
細間(あっやべ…)
●細間の腕から段ボール箱が前に飛び出す。階段下に飛美奈を目にする。
細間(って、前に人いるじゃん!)
細間「うわぁ!あぶない!」
●飛美奈に段ボールが当たる。
細間(うわ、やっちゃった…。とにかく謝らないと)
細間「うわっ、やばやば。君大丈夫…?」
●細間。飛美奈に向かって手を伸ばすが、飛美奈の顔を見て頬が少し赤くなる。
細間(この子…めっちゃかわいい…)
●飛美奈。細間のことを見たまま固まる。
細間(って、そんなこと考えている場合じゃない!)
細間「あ…あの、動ける?」
飛美奈「あっ…あの…い…」
●飛美奈。ゆっくり自力で立ち上がる。
細間「怪我はしていないみたいだね。…よかった」
細間(2階にいるってことはたぶん1年生か。…せっかくだし、仲良くなっておきたい…)
●飛美奈。その場から逃げるように走り出す。
細間「あの、待って!」
●飛美奈。驚いて足を止める。
地の文「細間湯睦真は考えた。この出会いを、どうするべきなのか。ここのままこの少女と分かれたら、もう話しかける機会はないかもしれない。この先第二、第三の少女が現れるわけでもない…」
細間(くそぉ。同じ学校の生徒とは言え、たぶんこのままじゃまた会うことはできない。何とかしないと…)
地の文「考えに考えた末、細間湯睦真は一つの質問をした」
細間「…君、名前は?」
●飛美奈フリーズする。
細間(いや、なんで急に名前聞いたんだ俺は!?そりゃ驚くよ!『何だこの人!?』って感じの顔してるよあの子。うぅ…どうすれば…)
●飛美奈。再び勢いよく走り出す。
細間「あっ、ちょっと!」
●細間。その場に立ち尽くす。
細間(行っちゃった…。段ボールぶつけた上に、急に名前聞くなんて…、たぶん変な印象与えちゃったよ…)
●細間。段ボールを何とか抱え、階段を降りる。
細間(でも、また会いたいな…)
●少し時が流れ教室。細間。机に突っ伏して窓から見える外を見る。
クラスの女子1「…ねぇ、湯睦真くんがあんなに静かなんて珍しくない…?」
クラスの女子2「…確かにね。何かあったのかな…?」
地の文「細間湯睦真は混乱していた。数時間前の出来事について。あの1年生と目が合ったとき、自分の身に何が起きたのか、ずっと理解できないでいた。一つ確かなのは、自身の心臓の鼓動が、あの瞬間激しくなっていたということ。曲の拍数で例えると、いつもはベートーヴェン作曲の月光くらいだったのが、あの瞬間オッフェンバック作曲の天国と地獄くらいになっていた。いまだに高い体温、あの瞬間を思い出すたびに鳴り響く心臓、明らかに少なくなった口数、聞こえなくなる周りの声、そして頭からずっと離れない…あの少女の姿。あの瞬間、自分の身に何が起きたのか?考えた末、細間湯睦真は僅か2秒で結論にたどり着いた」
細間(…これ、恋じゃん)
地の文「恋だった」

●日曜日の朝。細間の家。細間がベットから落ちる。
細間(…朝か、日曜の…)
●細間。勢いよく立ち上がる。
細間(待ちに待ったデート当日だ!)
●細間。目覚まし時計を見る。
細間(楽しみすぎて、目覚ましより前に起きちゃった。せっかくだし、早めに支度しちゃおっと)
●細間。顔を洗い、朝ご飯を食べ、歯磨きをして、櫛で髪をとかす。その後着替えて、ウエストポーチをかける。
細間(よし、準備万端!)
●細間。玄関のドアを開ける。
細間(行ってきま~す!)

●ショッピングモールの前に到着する細間。
細間(楽しみすぎて、1時間くらい前に着いちゃった…。早く着いて、1人待っている状況…。もしかして俺、逆ナンされちゃったりしちゃって…)
●細間。ニヤける。
地の文「10分後」
●飛美奈。細間を見つけて駆け寄ってくる。
飛美奈「お待たせ、しました…」
細間(さすがに、逆ナンされることはなかったか…)
細間「いいよいいよ、そんなに待っていないし」
飛美奈「細間先輩、相変わらず、早いですね…」
細間「またせちゃいけないと思って、なんか早く着いちゃた。人と待ち合わせしたことなんてないし、どれくらいのタイミングで行けばいいのか、わからないんだよね」
飛美奈「確かに、そうですね。私も、なんだかんだ早くに着いちゃってますし…」
●飛美奈と細間。ともに軽く笑う。
細間「それに今日は、デートだもんね!」
飛美奈「そういえば、そうですね…
細間「ま、とりあえず行こっか!」
飛美奈「はい…」
●飛美奈と細間。ショッピングモールに入っていく。
●文乃。ショッピングモールに入っていく飛美奈と細間を物陰に隠れながら見る。
文乃(細間湯睦真。あなたが飛美奈に同接しているのか、しっかり見させてもらうからね)
●ショッピングモール内を歩く飛美奈と細間。
飛美奈(デート…。ただのお出かけじゃなくてデート…。ただでさえ緊張するのにデート…。落ち着け、私。細間先輩は、今日を楽しみにしていたんだ。しっかりと、楽しまなきゃ…)
細間「まずどこ行く?」
飛美奈「そ、そうですね、どこに行きましょう…?」
細間「いきなりフードコートに行っちゃう?」
飛美奈「まだお昼には、早いんじゃ…」
細間「ふふっ…そうだね」
●細間。洋服屋を指さす。
細間「服でも見ていく?」
飛美奈「あっ、そうしましょう」
●飛美奈と細間。いろんな服を見て回る。
細間「飛美奈。何か試着してみたら?」
飛美奈「えっ、私が…ですか?」
細間「これとか似合うんじゃない?」
●細間。花がらのワンピースを手に取る。
飛美奈「そ、そんな派手な柄の服、私には似合わないかと…」
細間「飛美奈はかわいいから、似合うはずだよ。それに、せっかくのデートなんだから、デートらしいことしないと!」
飛美奈(そんな、『海に来たんだから海に行こう』みたいなこといわれても…。でも…)
飛美奈「わかりました。着てきます…」
●飛美奈。ワンピースを持って試着室に入る。その後、ワンピースを着た飛美奈が出てくる。
飛美奈「ど、どう、ですか…?」
●細間。飛美奈を見て、口を軽く開けたまま頬を赤く染める。
飛美奈「…あ、あの?」
細間「あっごめん!…すごく、似合っていたから…つい」
飛美奈「ありがとうございます…」
細間「すごく似合っていたし、買ってあげようか、それ?」
飛美奈「い、いえ、細間先輩に悪いですし!大丈夫ですよ!」
細間「そう…?」
●細間。残念そうに頬を膨らませる。
細間「じゃあ今度は、飛美奈が俺に合いそうな服選んでよ。飛美奈に着せるだけじゃ、なんか不公平だし」
飛美奈「私、ファッションセンスは、全然、ないですよ…?」
細間「勘で選べばいいんだよ。なんとなく『これかな?』って思ったやつでいいから」
飛美奈「えっと、じゃあ…」
●飛美奈。上着とズボンをさっと選ぶ。
飛美奈「本当に勘で選んじゃいましたけど…。似合わなかったら、ごめんなさい…」
細間「いいよ、別に。飛美奈が選んでくれた服ってだけで、うれしいし!」
●細間。試着室に入る。選んだ服を着た細間が、試着室から出てくる。
細間「割と似合ってない?これ?」
●飛美奈。目を見開いて細間を見る。
飛美奈「やっぱり細間先輩はかっこいいですから、どんな服でも似合いそうですね」
細間「いや、そんなことは…あるね!」
●飛美奈。細見の発言に笑いをこらえる。
●文乃。店の外から2人のやりとりを見る。
文乃(今のところ、楽しそうにやっているな…)
●ショッピングモール内を歩く飛美奈と細間。
細間「う〜ん、なんだろうな…」
飛美奈「…どうかしましたか?」
細間「いやね、飛美奈がたどたどしくなるのは仕方ないとして、俺に対する飛美奈の態度が、なんか納得いかないというか…」
飛美奈「えっ、私、細間先輩のことを怒らせていました!?」
細間「いや、そうじゃなくてね?今の感じだと、先輩後輩感が強い気がしてね」
飛美奈「それは…、実際に先輩後輩の関係ですし…」
細間「それでも俺は、もっと距離感を近くしたいんだよ…。よし!これから飛美奈は、俺にタメ口を使うこと。俺を呼ぶときも、下の名前の『湯睦真』で呼ぶこと!」
飛美奈「えっえぇ…」
細間「今日だけでいいからさ。お願い!」
●細間。首を右に傾け、ウインクして、両手を合わせる。
飛美奈「わかり…わかった。今日だけ…だよ…、湯…睦真…」
細間「あ〜いいね。距離が縮まった感じがする!」
飛美奈(うぅ〜。これ、思ったより大変かも…)
●飛美奈と細間。アニメショップにあるグッズを見る。
細間「飛美奈って、好きなアニメってある?」
飛美奈「よく見るのは、異世界転生系とか…だね…」
細間「あ〜、俺も好きだな。あとはラブコメとか、バトル物とか…、だいたいのジャンル好きだな、俺」
飛美奈「そう…なんだ…。私も、そんなにアニメ見ているわけじゃないから…、いろいろ教えて…ほしいな」
細間「うん。好きなアニメいっぱいあるから、いろいろ教えてあげるね。…ま、俺が一番好きなのは、飛美奈なんだけど…」
飛美奈「…え?」
細間「…ドキッとした?」
飛美奈「それは、急にそんなこと言われたら…」
細間「そっか、フフッ…」
飛美奈(細間先輩、本当に油断も隙もない人だ…)

●沙良の家。沙良。ベッドの上で携帯電話をいじっている。
沙良(今頃、細間先輩と宮々さんはショッピングモールでデート中か…。宮々さん、楽しくやっていればいいけど。ていうか、あの桜文乃って子、本当に行ったのかな?細間先輩と宮々さんの関係に、納得してくれるといいんだけど…。ていうか、兎唯先輩、あんなこと言っていたけど、まさかついて行ったりしないよね?あーもう、いろいろと気になる!)
●携帯電話の通知音が鳴る。
沙良(あっあいつ。しっかり連絡が来るなんて、あの日以来だ…)
●沙良。メッセージを開く。
女子生徒1【沙良。あんた木枯兎唯って人と仲良くなったって本当?】
沙良【仲良くってのは違うけど、連絡先は交換した】
女子生徒1【いくらうちらと喧嘩したからって、その人と関わるのはまずいって!】
沙良【木枯兎唯って人は、ものすごい変態だって有名なんだよ】【体触られたり、スカートをのぞかれたりしたって子が1年にも何人かいて】【とにかくもうその人と会ったりしたらだめ!】【木枯兎唯は性癖モリモリ淫乱マンの変態だから】
沙良【わかったよ…】
●沙良。携帯電話を閉じる。
沙良(あの人、そんなにヤバい人だったんだ…。もしかし画私、まんまと騙されていたのかな…?)

●飛美奈と細間。フードコートでハンバーガーとフライドポテトを食べる。
細間「やっぱり、ファーストフードって最強だね!」
飛美奈「そうで…、そうだね…」
細間「俺に敬語で話すの、もしかして難しい?」
飛美奈「そもそも、誰かにタメ口を使ったことがない…から…」
細間「家族に対しても?」
飛美奈「両親と会話しているときでも、自然と敬語になっちゃうん…だよね…」
細間「なら、いい機会なんじゃない?タメ口慣れしといたほうがいいよ」
飛美奈「なるほど…」
飛美奈(いや、タメ口慣れって何?)
細間「それに俺は、さっきから言っているように、そのほうが距離感近くて嬉しいんだ」
飛美奈「私も、湯…湯睦真とより仲良くなっている気がして、嬉しいな…」
●飛美奈。自然と笑顔になる。
細間「…飛美奈はやっぱりかわいいな…」
飛美奈「ほんと、不意に言って、くるね…。あと私、そんなに可愛くないよ…」
細間「いや、かわいいよ…」
●フードの少女。フードコートのラーメン屋からお盆に乗ったラーメンを取り出し、席に運ぶ。
フードの少女(フフフ…。こういうときの味噌ラーメンは、格別だよね〜)
●フードの少女。椅子に座り、手を合わせ、ラーメンを食べる。
フードの少女(美味ぁ〜!生きてるって感じがする〜!ラーメン最高〜!…さてと)
●フードの少女。離れた席にいる、飛美奈と細間を眺める。

●フードの少女の回想。商店街でタイヤキを食べている。
フードの少女「それってマジなの?」
シツチエリ『断定はできないけどな。ずっと静かなはずなのが、常に楽しげに過ごしているって違いなんだけども』
フードの少女「本当に少しの変化だな。あのウザいマシン、もといディグルドが未来は常に変化し続ける的なこと言っていたけど、そういうことってあるの?」
シツチエリ『俺が聞いた限りでは、そんなことないと思うぞ。たぶんお前騙されてんじゃね?』
フードの少女「あいつに嫌われてんのは、まあ想定内だよ。またなんかあったら教えてね」
シツチエリ『…ところでお前、なにか食べてるのか?』
フードの少女「うん、たい焼き。めっちゃ美味しい」
シツチエリ『お前、いつもなんか食べてるな…』

フードの少女(歴史が変化している…?面白いじゃん、あの子たち)
●フードの少女。ラーメンのスープを一気飲みする。

●飛美奈と細間。ガチャ専門店に入る。
細間「こういうのって、全部見たくなっちゃうんだよね、俺」
飛美奈「あっ、なんか…わかる。回す気がなくても、いろいろと、見たくやっちゃう…よね」
●飛美奈と細間。一緒にガチャガチャを見て回る。
細間「あっ!これ、面白そう!」
●細間。ガチャを回す。
飛美奈「何を、回したの?」
細間「見て、お寿司のマグネット!かわいくない?」
飛美奈「おぉ〜、たしかにかわいい」
細間「まっ、飛美奈のほうが…」
飛美奈「絶対に言うと思った…」
細間「へへっ、ごめんて…」
飛美奈「もう…」
細間「あっ、あれも面白そう!」
●細間。次々とガチャを回し、手に10個ほどのカプセルを抱えて戻って来る。
飛美奈「さすがに回しすぎじゃ…」
細間「だね…。全部だしたほうがいいなこれ。ちょっと手伝って!」
●飛美奈と細間。カプセルを開けていく。
飛美奈「で…どうするの…これ?」
細間「とりあえず、ウエストポーチに詰め込む。たぶん全部入ると思うんだけど」
●細間。ウエストポーチにガチャの景品を入れていく。
細間「よし、これで全部…」
●ウエストポーチの中からキーホルダーが落ちる。
細間「あっやべっ!」
●細間。床を転がりキーホルダーを取る。
細間「ふぅ、危ない危ない。俺の推しを傷つけてしうところだったぜ…」
飛美奈「湯睦真、それは…」
細間「あっこれ?」
●細間。キーホルダーを飛美奈に見せる。
細間「知らない?オルライブの桃色ファーナっていうんだけど」
飛美奈「オルライブ…?」
飛美奈(なんか、クラスでときどき名前は聞くけど、なんなんだろう?)
細間「バーチャル配信者グループってやつ」
飛美奈「あぁ…、なんか聞いたことある。バーチャル空間で動画配信するっていうあれか。その子が、湯睦真の推しなの?」
細間「そうだよ。あっ!言っておくけど、好きな人と推しは、意味が違うからね。飛美奈は飛美奈で、ファーナはファーナ。そもそも推しっていうのは…」
飛美奈(なんか、めっちゃ語りだしちゃった…)

●飛美奈と細間。ショッピングモールから出てくる。
細間「すっかり夜になっちゃったね」
飛美奈「うん。楽しくて、あっという間だったよ…」
飛美奈(最初はどうなるかと思ったけど、しっかりデートできた。やっぱり細間先輩となら、私、安心して行動できるのかもしれない)
細間「電車には、1人で乗れる?無理なら俺が…」
飛美奈「いえ、今日は…1人で、頑張ってみます!」
●飛美奈。胸の前で右手を握りしめる。
細間「本当に、大丈夫なの?」
飛美奈「わざわざ一緒に行ったら、湯睦真が大変でしょ?ここから、家近いわけだし」
細間「確かに、そうだけど…。本当に一人で大丈夫なの?」
飛美奈「うん。私を信じてほしい」
細間「本当に?」
飛美奈「うん。だから…」
細間「本当に本当に?」
飛美奈「湯睦真。…もしかして、私と離れるのが、嫌…なの?」
細間「えっ、あっ、その…、えっと〜…」
●細間。両手を胸の前で握りしめる。
細間「…そりゃそうに決まってるでしょ!飛美奈ともっとずっといたいもん!飛美奈はかわいいし、一緒にいて安心するし、あと…その……かわいいし」
飛美奈「2回も言わなくて、いいよ…」
細間「大事なことだから2回言ったの!だって俺、飛美奈が好きだもん!」
●細間。頬を膨らませる。
飛美奈「お、大声で言わないで…!誰かに聞かれたら、恥ずかしい…」
細間「そっそうだね。ごめんごめん…」
●飛美奈と細間。顔を赤くする。
細間「じゃあ…もう、帰ろうか…」
飛美奈「そう…だね…」
●飛美奈と細間。駅に向かって歩き出す。
●フードの少女。2人を遠くから眺める。
フードの少女(う〜ん、青春だね)
文乃「あんた、だれ?」
フードの少女「へ?」
●フードの少女。振り返る。
文乃「今日ずっと、あの2人のこと見てたよね。あんた、もしかしてストーカー?」
フードの少女「いや〜その。そういうわけではなくてね…」
●文乃。フードの少女に殴りかかる。
●フードの少女。頭を抱えて拳をかわす。
フードの少女「ちよっ、何!?」
文乃「飛美奈に危害を加えるなら、そのままにはしておけない…」
フードの少女「ちょっと待て!私はそんなつもりは…」
●文乃。再びフードの少女に殴りかかる。
●フードの少女。腕で拳をガードする。
フードの少女「くぅぅ〜。『バカでもわかる戦闘訓練教室』をサボるんじゃなかったぁ…」
文乃「くたばれ…。このストーカー野郎!」
●ディグルドが上から降ってきて、文乃とフードの少女の間に着地する。
ディグルド「面倒クサイコトニ、ナッテシマッテイルナ」
フードの少女「お、お前どっから!?ていうかお前、こんな時間に出てくんな!」
●ディグルド。文乃のほうを見る。
ディグルド「オ前ガ、桜文乃…ダナ?」
文乃「そう、だけど…。なにあんた?」
ディグルド「一ツ、聞キタイコトガアル。宮々飛美奈ハ、今ドウイウ状況ニ、アルンダ?楽シソウカ?ソレトモ、…苦シンデイルカ?」
文乃「なんでそんなことを聞くのか知らないけど、飛美奈は今、楽しく生きているはずよ」
フードの少女(この子、目の前にロボットが現れたっていうのに、全然微動だにしていない。強いな、こいつ…)
文乃「あの細間って人は、飛美奈と上手くやっているみたいだし、飛美奈もずっと楽しそうだった」
ディグルド「ソレ以前ハ、ドウダッタ?」
文乃「飛美奈は平和に過ごしていたわ。私が陰で守っていたからだと思うけど。細間って人が奇跡的に飛美奈と過ごせていたけど、少なくとも飛美奈は、一人でいる時が一番楽しく過ごしているの」
ディグルド「ソウカ…」
●ディグルド。背中から銃を取り出し、文乃に向かって構える。
ディグルド「マズイナ、ソレハ…!」
●ディグルド。文乃に向かって発砲する。
●文乃。その場に倒れる。
フードの少女「撃ったのって…、麻酔銃…たよね?」
ディグルド「ココ30分間の記憶ガ、消去サレルノモヲナ」
フードの少女「なんでこんなことした?」
ディグルド「未来ガ、変ワリツツアルヨウダカラナ。少シ、行動ヲ起コシタ」
フードの少女「なんだか、答えになっていない気がするんだけど…」
ディグルド「オ前ハ、監視ヲ続ケレバイイ。コレカラ主二行動スルノハ、ワタシダカラナ」
●ディグルド。フードの少女に背を向けて歩き出す。
フードの少女(やっぱ私、コイツに嫌われてるわ…)

●飛美奈の部屋。飛美奈。携帯電話で動画を観ている。
『青井ドール!』
『黄島レル!』
『緑山ミヤ!』
『桃色ファーナ!』
『黒木ソウナ!』
『紫川ラン!』
『赤田シキ!』
『7人揃って!』
『『『『『『『私たち、オルライブ!』』』』』』』
飛美奈(おお、こんな感じなのか…、バーチャル配信者グループって)
『先日、ファーナとシキの2人が、日光に旅行に行ったとのことで』
『ガチの日光東照宮に行ってきましたよ!』
『私たち、バーチャルアイドルだよね…?』
『そんな設定いいんだよ!』
『設定とか言わないで!?』
『まあこのファナシキコンビが、せっかく旅行に行ったというわけで、今回やるのは、その日光で撮った写真を使った企画です!』
飛美奈(この人だ、細間の推し。確かに、かわいい人だ…)
『それではいきましょう!この桃色ファーナが君のトキメキを取り戻す!』
『うぉ〜!いつもの決まったぁ!』
飛美奈(前に細間先輩がやっていたのって、これだったんだ…)
●携帯電話にメッセージが来る。
飛美奈(あっ、細間先輩)
細間【飛美奈。今何してたの?】
飛美奈【オルライブの動画を観てました】
細間【おお、早速布教ができたようだ】
飛美奈【あんなに熱弁されたら、気になっちゃって】【で、何か話があるんですか?】
細間【そうそう。今日のデート中はタメ口で話してもらったじゃん?】
飛美奈【そうですね】
細間【タメ口は今日だけと約束したな】【あれは嘘だ】
飛美奈【それはどういう…?】
細間【休日だけでいいからさ、タメ口で会話してほしいんだ】【直接会っている時だけじゃなく、こうやってメッセージのやり取りをしているときでも】
飛美奈【なるほど…。別にいいですよ。私もタメ口に慣れておきたいですし】
細間【じゃあ今からはじめ!】
飛美奈【えっ!?】【わかったあよ〜】
細間【なんか、直接会っている時より緊張してない?】
飛美奈【やっぱり慣れないとですね…】
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