Too late
第1話 卒業
高校を卒業した。
芸能高校だから私以外にも芸能界にいる子や練習生の子もたくさんいて、記者やファンのカメラも多く騒がしい卒業式だった。
こんな日くらいは放っといてほしいという気持ちを、応援してくれてる人のお陰で今があるのだと感謝する心で覆い隠して記者たちのカメラには笑顔を向けた。
本当は三年間仲良くしてくれた最高の親友、ジウォンとチョルスと3人でずっと一緒に居たかったし2人のご両親とももっと長くお喋りしたかった。でも一般人のジウォンや数年後にデビューを控えているチョルスをメディアにさらすわけにはいかず、3人での卒業の祝杯はまた後日に会うときまで我慢することに。
私は同世代の子たちよりも早く社会に出た。
3年前、高校1年生の春には既に芸能界に出ていた私。YUエンターテイメントという大きな会社のソロアーティスト、事務所アーティストの中でも最年少でデビューした。
学生というよりもアイドルとして人と接することの多かった私のことをジウォンとチョルスは私を「ただの同級生」として見てくれた。
メディアやファンの囲みがひとしきり終わるまで待ってくれていた2人と共に最後の通学路を歩く。
真冬のソウルは耳が真っ赤になるほど寒くて、2人は真ん中にいる私にぎゅうぎゅうに体を寄せている。
私知ってるんだからね、私が仕事で学校を欠席したときは二人とも意識しすぎて全然くっつかずに歩いてるって。
チョルスは私を男友達の1人みたいに思ってるんだろう。意識されてないとそれはそれで嬉しい。
ジウォンが白い息を吐きながら私の顔を覗き込むようにいった。
「こんな時ばかりはシウオッパに会って卒業した私たちの姿を見せつけてやりたいよね」
突然話題に出た彼の名前に変な反応をしないよう、目線を遥か遠くに置く。
「しょーがないだろ! ヒョンもあっちで頑張ってんの!」
チョルスが勢いよく答える。
二人が恋しがっているシウとは私の幼馴染みのことだ。昨年の夏にニューヨークに留学したがそれまでは四人でよく遊んでた。
シウ、ニューヨークで元気にしてるかな?
あっちに行くって決めたのは本人だしもう私のことも......何とも思っていなければいい。
私たちよりも二つ上の彼のことをジウォンとチョルスは年上のお兄さんに対しての敬称を付けて呼んでいる。私も彼のことをオッパと呼べるような関係のままで居続けられたならば、ずっと変わらずただの幼馴染みのままでだったのかな。
どこで間違えたんだろう。
彼があっちに行って最初の頃は四人のグループチャットも個人チャットも動いてたけど、やはり彼とは金輪際関わりを持ってはいけないと思って彼に嫌われようと半ば意地になって彼に酷いことを言ってしまった。
“二度と連絡しないで“って。
今思えばムキになりすぎてた。
私のことをよくわかってる彼だから、いつかは連絡がくるだろうと思い込んでたけどとうとう連絡がこなくなって4ヶ月が経つ。
いつかは彼から離れないと、と思いつつもそのタイミングを先延ばしにしてしまっていたからこうやって無理にでも離れるくらいでちょうどいい。
チョルスには「シウにこんなこと言っちゃった」って伝えた。全く何も知らないジウォンが不審がることのないようにチョルスはこれまで通り連絡とってるらしい。
ボーッと考えているとチョルスが私の様子を伺った。チョルスは、シウと私に何かあることには気づかないフリをしてくれていてお互いに暗黙の了解ってところだ。何も聞いてくることもない。優しい。
だからこそチョルスと私の間には秘密の結束力があるんだけど同じ高校で同じ事務所でもあり同い年のデヒョンとはまた違った仲のよさ。
私とシウの本当の関係性は誰も知らないし、私たちが隠している秘密は私の目の前にいるこの純粋な2人には口が裂けても言えない。
漢字漢字漢字漢字漢字漢字漢字
「ねぇねぇ、明日何時からにする?」
明日は私が丸一日オフだから卒業祝をする予定だ。
「昼からがいいかなー。俺、その日だけは休みもらってんだ」
チョルスは偉い。毎日毎日練習でも全然弱音吐かない。チョルスの事務所はデビュー予定の男子がチョルスよりも年下ばかりらしく、みんなの面倒も見てるし私なんかよりもよっぽど忙しそう。
「じゃあチョルスに合わせようよ。
ぐっすり眠れる日なんて限られてるだろうから何時からでもいいよ。」
「そんなん言われたら多分俺一日中寝る」
「ユリはどう?」
携帯をなんとなしに眺めていたら次の予定までの時刻が差し迫っていることに気づいた。
「やばっ! あとでまた連絡するわ! バイバイ!」
ジウォンは家族と、チョルスは練習生の子たちと、それぞれ時間を過ごすらしく私も久々に実家に帰るけどその前に予定がある。
晴れやかな卒業式の日に事務所からの呼び出しをくらった。
芸能高校だから私以外にも芸能界にいる子や練習生の子もたくさんいて、記者やファンのカメラも多く騒がしい卒業式だった。
こんな日くらいは放っといてほしいという気持ちを、応援してくれてる人のお陰で今があるのだと感謝する心で覆い隠して記者たちのカメラには笑顔を向けた。
本当は三年間仲良くしてくれた最高の親友、ジウォンとチョルスと3人でずっと一緒に居たかったし2人のご両親とももっと長くお喋りしたかった。でも一般人のジウォンや数年後にデビューを控えているチョルスをメディアにさらすわけにはいかず、3人での卒業の祝杯はまた後日に会うときまで我慢することに。
私は同世代の子たちよりも早く社会に出た。
3年前、高校1年生の春には既に芸能界に出ていた私。YUエンターテイメントという大きな会社のソロアーティスト、事務所アーティストの中でも最年少でデビューした。
学生というよりもアイドルとして人と接することの多かった私のことをジウォンとチョルスは私を「ただの同級生」として見てくれた。
メディアやファンの囲みがひとしきり終わるまで待ってくれていた2人と共に最後の通学路を歩く。
真冬のソウルは耳が真っ赤になるほど寒くて、2人は真ん中にいる私にぎゅうぎゅうに体を寄せている。
私知ってるんだからね、私が仕事で学校を欠席したときは二人とも意識しすぎて全然くっつかずに歩いてるって。
チョルスは私を男友達の1人みたいに思ってるんだろう。意識されてないとそれはそれで嬉しい。
ジウォンが白い息を吐きながら私の顔を覗き込むようにいった。
「こんな時ばかりはシウオッパに会って卒業した私たちの姿を見せつけてやりたいよね」
突然話題に出た彼の名前に変な反応をしないよう、目線を遥か遠くに置く。
「しょーがないだろ! ヒョンもあっちで頑張ってんの!」
チョルスが勢いよく答える。
二人が恋しがっているシウとは私の幼馴染みのことだ。昨年の夏にニューヨークに留学したがそれまでは四人でよく遊んでた。
シウ、ニューヨークで元気にしてるかな?
あっちに行くって決めたのは本人だしもう私のことも......何とも思っていなければいい。
私たちよりも二つ上の彼のことをジウォンとチョルスは年上のお兄さんに対しての敬称を付けて呼んでいる。私も彼のことをオッパと呼べるような関係のままで居続けられたならば、ずっと変わらずただの幼馴染みのままでだったのかな。
どこで間違えたんだろう。
彼があっちに行って最初の頃は四人のグループチャットも個人チャットも動いてたけど、やはり彼とは金輪際関わりを持ってはいけないと思って彼に嫌われようと半ば意地になって彼に酷いことを言ってしまった。
“二度と連絡しないで“って。
今思えばムキになりすぎてた。
私のことをよくわかってる彼だから、いつかは連絡がくるだろうと思い込んでたけどとうとう連絡がこなくなって4ヶ月が経つ。
いつかは彼から離れないと、と思いつつもそのタイミングを先延ばしにしてしまっていたからこうやって無理にでも離れるくらいでちょうどいい。
チョルスには「シウにこんなこと言っちゃった」って伝えた。全く何も知らないジウォンが不審がることのないようにチョルスはこれまで通り連絡とってるらしい。
ボーッと考えているとチョルスが私の様子を伺った。チョルスは、シウと私に何かあることには気づかないフリをしてくれていてお互いに暗黙の了解ってところだ。何も聞いてくることもない。優しい。
だからこそチョルスと私の間には秘密の結束力があるんだけど同じ高校で同じ事務所でもあり同い年のデヒョンとはまた違った仲のよさ。
私とシウの本当の関係性は誰も知らないし、私たちが隠している秘密は私の目の前にいるこの純粋な2人には口が裂けても言えない。
漢字漢字漢字漢字漢字漢字漢字
「ねぇねぇ、明日何時からにする?」
明日は私が丸一日オフだから卒業祝をする予定だ。
「昼からがいいかなー。俺、その日だけは休みもらってんだ」
チョルスは偉い。毎日毎日練習でも全然弱音吐かない。チョルスの事務所はデビュー予定の男子がチョルスよりも年下ばかりらしく、みんなの面倒も見てるし私なんかよりもよっぽど忙しそう。
「じゃあチョルスに合わせようよ。
ぐっすり眠れる日なんて限られてるだろうから何時からでもいいよ。」
「そんなん言われたら多分俺一日中寝る」
「ユリはどう?」
携帯をなんとなしに眺めていたら次の予定までの時刻が差し迫っていることに気づいた。
「やばっ! あとでまた連絡するわ! バイバイ!」
ジウォンは家族と、チョルスは練習生の子たちと、それぞれ時間を過ごすらしく私も久々に実家に帰るけどその前に予定がある。
晴れやかな卒業式の日に事務所からの呼び出しをくらった。
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