Too late
4月に入ってからは自分のカムバック準備にかける時間が増えてハル先輩と会う機会がめっきり減った。
朝は早いし夜は遅いしご飯にはマネージャーのミレオンニやスタッフと行くから。
彼は日常の些細な愚痴とか出来事を話すのが好きらしく、謎に結構どうでもいいことをカトクで送ってきたり電話してきて話したりする。
今その話する必要あるのかと思う事も彼にとってはすごく意味のある話みたい。
2人で話す時は基本は私がベラベラ話してる。先輩は自分が話すタイプではなく、それに私の話がおもしろいらしくていつもニコニコしながら聞いてくれる。
カムバの準備の中で凹む様なことは多々起こるから、それを気楽に話せる相手がいて私もなんだか嬉しい。
短い期間で頻繁に会ってたからたった2、3週間弱くらい会えてないだけでもう長いこと彼に会ってないように感じる。
親しくなる前は半年近く会わなくても気にも止めていなかった相手、それでもよく会うようになると少し会わないだけで気になる様になるもんなんだ。
多忙のあまり変な間を挟みながら続いてるカトクに《今からレコーディングです》って送信した。
レコーディングスタジオのブースに入って何回か挑戦してやっとOKが出た。
「はぁーっ」と項垂れながらスタジオを出てくると、まさかのハル先輩が待ち構えていた。
「オッパ!」
「ユリ〜久しぶり」
眠かったのと身体も心も疲れていたのとで、兄に甘える妹の気分で彼にぎゅっと抱きついた。
そしたら「えっ?」と彼の動揺した声が耳元で聞こえて私何かまずいことしたかな?とすぐさま離れた。
彼とプライベートで会った時に何度か彼に軽いハグをされたことがあって、妹のようにかわいがってくれている気がしていたのけど、もしかして私からするのは違った?
失礼なことしちゃってるのかも。
焦って彼から体を引き離そうとしたら「待って!」と彼に抱きしめられた。
先輩とは身長がそう変わらないけれど相当体を鍛えているためトレーナーの上からでも上腕二頭筋の盛り上がりがわかるぐらいにはゴツいし、こうやって抱きしめられるとどうしても“男“を感じる。
まずいと思って彼の体を強く押し返した。
先輩は眉毛をへの字にさせて少し悲しそうに「嫌だった...?」と私を見つめる。
「誰が来るか分からないし……」
2人の背後にはさっきまで居たスタジオのドア。
音楽担当スタッフさんたちは中で作業を続けていて、目の前に広がる空間には偶然誰もいないけれど流石に人がいつ来てもおかしくない。
こんな所で先輩に抱きついた私もよくない。
正直、人肌恋しくて身近な彼に甘えたくなったのは事実。
今日録った今回のアルバム収録曲最後の1曲はリク先生の作った曲だった。
もしかして先生が来てくれるんじゃないかと期待していた。しかし先生はもう1人デビュー初期から担当してくれている音楽スタッフにすべてを託していて一度も姿を見せることはなかった。
「どうした?辛いことあった?」
彼は私の頭を優しく撫でて、もう片方の人差し指で頬をツンツンする。
なんだかあやされている子どもみたい。
つい笑ってしまうと目の前にいる彼もくすっと笑った。
「ずっとユリに会いたかった」
「私も会いたかったです」
会いたかった。
あの人に——
朝は早いし夜は遅いしご飯にはマネージャーのミレオンニやスタッフと行くから。
彼は日常の些細な愚痴とか出来事を話すのが好きらしく、謎に結構どうでもいいことをカトクで送ってきたり電話してきて話したりする。
今その話する必要あるのかと思う事も彼にとってはすごく意味のある話みたい。
2人で話す時は基本は私がベラベラ話してる。先輩は自分が話すタイプではなく、それに私の話がおもしろいらしくていつもニコニコしながら聞いてくれる。
カムバの準備の中で凹む様なことは多々起こるから、それを気楽に話せる相手がいて私もなんだか嬉しい。
短い期間で頻繁に会ってたからたった2、3週間弱くらい会えてないだけでもう長いこと彼に会ってないように感じる。
親しくなる前は半年近く会わなくても気にも止めていなかった相手、それでもよく会うようになると少し会わないだけで気になる様になるもんなんだ。
多忙のあまり変な間を挟みながら続いてるカトクに《今からレコーディングです》って送信した。
レコーディングスタジオのブースに入って何回か挑戦してやっとOKが出た。
「はぁーっ」と項垂れながらスタジオを出てくると、まさかのハル先輩が待ち構えていた。
「オッパ!」
「ユリ〜久しぶり」
眠かったのと身体も心も疲れていたのとで、兄に甘える妹の気分で彼にぎゅっと抱きついた。
そしたら「えっ?」と彼の動揺した声が耳元で聞こえて私何かまずいことしたかな?とすぐさま離れた。
彼とプライベートで会った時に何度か彼に軽いハグをされたことがあって、妹のようにかわいがってくれている気がしていたのけど、もしかして私からするのは違った?
失礼なことしちゃってるのかも。
焦って彼から体を引き離そうとしたら「待って!」と彼に抱きしめられた。
先輩とは身長がそう変わらないけれど相当体を鍛えているためトレーナーの上からでも上腕二頭筋の盛り上がりがわかるぐらいにはゴツいし、こうやって抱きしめられるとどうしても“男“を感じる。
まずいと思って彼の体を強く押し返した。
先輩は眉毛をへの字にさせて少し悲しそうに「嫌だった...?」と私を見つめる。
「誰が来るか分からないし……」
2人の背後にはさっきまで居たスタジオのドア。
音楽担当スタッフさんたちは中で作業を続けていて、目の前に広がる空間には偶然誰もいないけれど流石に人がいつ来てもおかしくない。
こんな所で先輩に抱きついた私もよくない。
正直、人肌恋しくて身近な彼に甘えたくなったのは事実。
今日録った今回のアルバム収録曲最後の1曲はリク先生の作った曲だった。
もしかして先生が来てくれるんじゃないかと期待していた。しかし先生はもう1人デビュー初期から担当してくれている音楽スタッフにすべてを託していて一度も姿を見せることはなかった。
「どうした?辛いことあった?」
彼は私の頭を優しく撫でて、もう片方の人差し指で頬をツンツンする。
なんだかあやされている子どもみたい。
つい笑ってしまうと目の前にいる彼もくすっと笑った。
「ずっとユリに会いたかった」
「私も会いたかったです」
会いたかった。
あの人に——