Too late

キッカケ

 まさかのまさか、思ってもみないことが起きた。

「俺たち、付き合わない?」

 カムバックのちょうど1週間前、ダンスレッスンを夜遅い時間まで続けた日。
 ハル先輩に少しだけでもいいから会いたいと言われて、ストレスが溜まりに溜まった私も人に会って癒されたかった。ミレオンニ(マネージャー)に車で家まで送ってもらってる間には彼と会う約束を済ませていたのだが絶対にバレないようにと家に帰り着いて30分以上してから彼には家の近くまで来てもらった。
 どこかへ連れて行ってくれる時はいつも家近くの公園まで車で迎えに来てくれる。
 《ついたよ》とカトクがきて公園まで走る。見慣れた彼の車を見つけて運転席にいる彼に手を振って寄って行った。
 普段通りに助手席に乗り込もうとすると彼に止められて後部座席に乗るように言われた。
 これから一体何をするのだろうか、、、見当もつかない。
 彼も運転席から降りて私の隣にやってきた。なんとなくだけど彼から緊張感が伝わる。

「会いたくて来ちゃった」

 真隣にいるのに目が合わない。
 様子がいつもと違うから不思議で私はじっと彼を見るけれど彼は気のせいか照れたような表情

「私も会いたかったです」

「ごめんね、疲れてるよね」

「今日、どうしたんですか?」

 彼はゆっくりと顔をこちらに向けて私の手を握った


「あのさ、......俺たち付き合わない?」


耳を疑った。
 私に同じ台詞を言った人の中でおそらく一番年上だし一番の有名人。
 人生で何度か言われたことはあったけどここまで拍子抜けすることはなかった。

 そういうことを言ってきた他の人たちは明らかに私を狙っている目をしていたしなんか気持ち悪かったから告白される前には勘づいていた。
 全然何も感じなかったのに。
 もしかしてハル先輩の“付き合う“ってこれからも仲良くしようってことではない?天然だから“付き合う“の意味が違うかもしれない。
 確かハル先輩のグループメンバーでもあるヒチョル先輩も「あいつは女の怖さを知らない」なんて言ってたしシエン先輩も似たような事言ってた。
 男女の関係になるってこととは違いそう。

「私のこと、好きなんですか?」

 彼は潤んだ瞳で「...うん」って一瞬だけ私と目を合わせたと思ったらすぐ逸らした。
 彼の恥じらう顔を見て本気度合いが伝わってくる。  
 しかし最近ではドラマにも出演している彼。もしやこれも演技では?と半信半疑になる。
 だってハル先輩はすごく売れているトップアイドルだし……綺麗な人をたくさん見てきているはずだから。この状況が不思議で仕方ない。

「好きなんだ」

 何が良くて私のこと好きなんだろう
 いや、もしかして遊びのつもり?
私がちょうどいい遊び相手になると思ってるのかな。
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