Too late
着信
「今回髪色決めたの、リク先生なんだよね」
ドレッサーに座りヘアアレンジをしていた私は、彼氏の口から出たその名前に若干の動揺を隠せなかった。
お風呂上がりの彼は隣のベッドの上で携帯をいじっている。
声色に焦りが表れないようにと意識した矢先、意味もなく引き出しからアイシャドウパレットを取り出してまた戻した。
彼は携帯の画面しか見ていない。
「先生、センスあるじゃん」
「しかも俺だけ黒髪なんだ。みんなは結構明るい色だったよ。先生が結局は黒がいいって言ってた」
「なにそれ〜」
テキトーな相槌を打って興味ないフリをしているけど、心がざわつきはじめる。
私の考えすぎならばそれでいい。
私はよくスタッフ達と話しているときに「男性は黒髪が一番いい」と推していた。
その場にもちろん先生もいて、先生を好きになってから彼に遠回しにでも好意を勘づかせたくて意識的に言っていた。今思い返すと自分の幼稚さに恥ずかしくなる。
当時は必死だった。だけど先生は当たり前にそんな話にも全く興味を示さなかった。
髪色をとにかく派手にしがちなKpopアイドル。デビューがほぼ決まっている彼らは今度のライブで大衆にインパクトを与えることが必須だろう。
そんな中で黒髪を指定した先生が、私の言っていた事を覚えているとも確信は持てないけど......
もしただの自意識過剰だとしても以前の私なら勝手に喜んでいそうだ。
なんだか今でもちょっぴり嬉しいと思ってしまっている自分がいて、デヒョンに悪いことをしている気分。
先生は私の発言ひとつひとつを覚えているタイプじゃない。うん、きっと私の考えすぎだ。
髪の毛も巻き終わって身支度完了。
普段はここまでしないけどヘアメイクを学んでいるジウォンに会う手前、洗いざらしのままは気が引けた。かといって自分で髪を巻くのなんて1ヶ月に1回もないか。
素人目にはうまくできているように見えるけどジウォンに下手って笑われちゃいそう。
ベッドにいる彼のそばに腰かけたら、彼が携帯を触るのをやめて私の脚を枕にした。
真下から見た顔って絶対に1番可愛くない。それが嫌で彼の目を手で覆う。
「どうしたの?」
「駄目。この角度はさすがにちょっとブス」
「ちょっとブスなユリを見れるのは彼氏の特権だね。どこから見てもかわいいけど」
男の人の力で簡単に手を退けられる。
片ひじついて上体を起こした彼に不意に唇を奪われた。
「毎日どんどん可愛くなってる気がする」
「昨日よりも?」
「昨日も可愛かったけど今日はもっと可愛い」
「なに言ってんの~練習中に私のこと思い出して変な顔しないように気を付けてね?」
「気を付ける。で、ニヤついちゃったらこの写真見る」
彼が見せてきたのは昨日公園でふざけあっていたときに私の知らぬ間に撮られていた写真。
疾走している私のブレブレな1枚だった。脚が遅いのにこの写真だと勢いがある、とデヒョンのお気に入りだ。
私を可愛い可愛いと褒めてくれるわりにはそんな変な移りの写真を気に入るなんて、アイドルとして悔しい。
ドレッサーに座りヘアアレンジをしていた私は、彼氏の口から出たその名前に若干の動揺を隠せなかった。
お風呂上がりの彼は隣のベッドの上で携帯をいじっている。
声色に焦りが表れないようにと意識した矢先、意味もなく引き出しからアイシャドウパレットを取り出してまた戻した。
彼は携帯の画面しか見ていない。
「先生、センスあるじゃん」
「しかも俺だけ黒髪なんだ。みんなは結構明るい色だったよ。先生が結局は黒がいいって言ってた」
「なにそれ〜」
テキトーな相槌を打って興味ないフリをしているけど、心がざわつきはじめる。
私の考えすぎならばそれでいい。
私はよくスタッフ達と話しているときに「男性は黒髪が一番いい」と推していた。
その場にもちろん先生もいて、先生を好きになってから彼に遠回しにでも好意を勘づかせたくて意識的に言っていた。今思い返すと自分の幼稚さに恥ずかしくなる。
当時は必死だった。だけど先生は当たり前にそんな話にも全く興味を示さなかった。
髪色をとにかく派手にしがちなKpopアイドル。デビューがほぼ決まっている彼らは今度のライブで大衆にインパクトを与えることが必須だろう。
そんな中で黒髪を指定した先生が、私の言っていた事を覚えているとも確信は持てないけど......
もしただの自意識過剰だとしても以前の私なら勝手に喜んでいそうだ。
なんだか今でもちょっぴり嬉しいと思ってしまっている自分がいて、デヒョンに悪いことをしている気分。
先生は私の発言ひとつひとつを覚えているタイプじゃない。うん、きっと私の考えすぎだ。
髪の毛も巻き終わって身支度完了。
普段はここまでしないけどヘアメイクを学んでいるジウォンに会う手前、洗いざらしのままは気が引けた。かといって自分で髪を巻くのなんて1ヶ月に1回もないか。
素人目にはうまくできているように見えるけどジウォンに下手って笑われちゃいそう。
ベッドにいる彼のそばに腰かけたら、彼が携帯を触るのをやめて私の脚を枕にした。
真下から見た顔って絶対に1番可愛くない。それが嫌で彼の目を手で覆う。
「どうしたの?」
「駄目。この角度はさすがにちょっとブス」
「ちょっとブスなユリを見れるのは彼氏の特権だね。どこから見てもかわいいけど」
男の人の力で簡単に手を退けられる。
片ひじついて上体を起こした彼に不意に唇を奪われた。
「毎日どんどん可愛くなってる気がする」
「昨日よりも?」
「昨日も可愛かったけど今日はもっと可愛い」
「なに言ってんの~練習中に私のこと思い出して変な顔しないように気を付けてね?」
「気を付ける。で、ニヤついちゃったらこの写真見る」
彼が見せてきたのは昨日公園でふざけあっていたときに私の知らぬ間に撮られていた写真。
疾走している私のブレブレな1枚だった。脚が遅いのにこの写真だと勢いがある、とデヒョンのお気に入りだ。
私を可愛い可愛いと褒めてくれるわりにはそんな変な移りの写真を気に入るなんて、アイドルとして悔しい。