Too late
午後4時すぎ。ジウォンから学校が終わったと電話が来て、ケーキは何が好きかと尋ねられた。手土産で持ってきてくれるのだろう。
彼が帰って部屋を掃除していたらジーンズのポケットに入れた携帯が着信を告げる。ジウォンが何か言い忘れたのだろうと思い込んで画面を確認せずに電話に出た。
「あ、ジウォン、どうしたの?」
掃除していた手をとめてソファーにドサッと座った。
電話の先はシーンとしている。数秒間の沈黙のあと、
「俺だけど......」
聞こえてきた声。携帯画面を確認すると【シウ】の表示。
確認しなかかった自分を攻める。
「っ......!」
ちょうど1年ぶりに聞いた、あの人の声。
「元気?」
動揺が声にでないよう、相手に悟られないよう、携帯を耳から少し離して唾を飲み込んだ。
「元気だよ。どうしたの?」
「いや......誕生日、おめでと」
「ありがと......」
「毎年一緒だったのに、8月6日にユリと一緒にいないってなんか変な感じだった」
「うん......」
「今ジウォン達と一緒?」
高校に入ってからの3年間は、私とチョルスの誕生日が2日違いなことから2人の誕生日の中日である7日に4人で祝っていた。チョルスは来年デビュー予定で、この面子で来年も同じ日に集まれる確証はないため今年は特別だ。
「ジウォンが学校だったから今から2人がうちに来るんだ」
「そうなんだ、じゃあずっと1人で居たの?」
口ごもる。彼氏の存在を無意識に隠そうとした自分の疚しさに、呆れた。
もう何年も私に一途なこの人の気持ちが変わっていないか確かめたかったのかもしれない。
ソファーからドレッサーの鏡が見える。鏡の自分と目が合った。
今付き合っている彼への申し訳なさからか罪悪感に満ちた顔をしている。
「男といたんだ」
黙り込んだ私を鼻で笑ってそう言った。
「彼氏いんの?」
本当のこと、言わないと。
「いる」
「へえ。そっか」
彼は分かっていましたと言わんばかりの反応。
「付き合ってどのくらい?」
「......まだそんな経ってない」
「そうなんだ」
軽い返事。もう興味なんてさらさら無さそう。
ずっと好きでいてくれたと言っても半同棲で男女の関係があったからであって1年も会わずにいたら気持ちは消え去って当然だ。
それに彼みたいな人が放っておかれるはずはない。黙っていても女の子はよってくるし、あっちにも相手がいるだろう。
変に意識してた自分がアホらしくて一気に気が抜けた。
よかった、もう完全にただの幼馴染みになれたんだ。
こんなことならもっと早くに連絡をくれていたらデヒョンに不安を与えることもなかったのに。
「あのさ、ごめんね!」
「んー?」
「去年......あんなこと言って」
シウが渡米して3ヶ月頃。彼がいなくなった淋しさもあったと思う。あまのじゃくで幼稚な私は彼を突き話すことしかできず「二度と連絡しないで」と伝えて一方的に電話を切った。
幼馴染みの彼には本心もお見通しだったようで「さみしかったんだろ、わかってるよ」と笑い飛ばす。私が寂しがり屋で弱いことを誰よりも知っている彼。
その包容力に目頭がジーンと熱くなって彼がいなくなってから慣れるまでの日々が
頭のなかを駆け巡った。あの時は感情を圧し殺していただけで、辛かったのだと今になって気づく。
「泣いてんの?」
「泣いてないもん!」
「......会いたいな」
しんみりと呟く。
「そんなこと言ったって、自分で望んでニューヨークに行ったんでしょ?」
「2年なんてすぐ過ぎると思ってたんだ」
「これからまたあと1年ってことか~長いけどすぐ過ぎそう」
「帰ったら会おうよ」
帰ったらといってもまだ1年も先。遠い未来のことだから、深く考えずに「いいよ」と返事した。
彼が帰って部屋を掃除していたらジーンズのポケットに入れた携帯が着信を告げる。ジウォンが何か言い忘れたのだろうと思い込んで画面を確認せずに電話に出た。
「あ、ジウォン、どうしたの?」
掃除していた手をとめてソファーにドサッと座った。
電話の先はシーンとしている。数秒間の沈黙のあと、
「俺だけど......」
聞こえてきた声。携帯画面を確認すると【シウ】の表示。
確認しなかかった自分を攻める。
「っ......!」
ちょうど1年ぶりに聞いた、あの人の声。
「元気?」
動揺が声にでないよう、相手に悟られないよう、携帯を耳から少し離して唾を飲み込んだ。
「元気だよ。どうしたの?」
「いや......誕生日、おめでと」
「ありがと......」
「毎年一緒だったのに、8月6日にユリと一緒にいないってなんか変な感じだった」
「うん......」
「今ジウォン達と一緒?」
高校に入ってからの3年間は、私とチョルスの誕生日が2日違いなことから2人の誕生日の中日である7日に4人で祝っていた。チョルスは来年デビュー予定で、この面子で来年も同じ日に集まれる確証はないため今年は特別だ。
「ジウォンが学校だったから今から2人がうちに来るんだ」
「そうなんだ、じゃあずっと1人で居たの?」
口ごもる。彼氏の存在を無意識に隠そうとした自分の疚しさに、呆れた。
もう何年も私に一途なこの人の気持ちが変わっていないか確かめたかったのかもしれない。
ソファーからドレッサーの鏡が見える。鏡の自分と目が合った。
今付き合っている彼への申し訳なさからか罪悪感に満ちた顔をしている。
「男といたんだ」
黙り込んだ私を鼻で笑ってそう言った。
「彼氏いんの?」
本当のこと、言わないと。
「いる」
「へえ。そっか」
彼は分かっていましたと言わんばかりの反応。
「付き合ってどのくらい?」
「......まだそんな経ってない」
「そうなんだ」
軽い返事。もう興味なんてさらさら無さそう。
ずっと好きでいてくれたと言っても半同棲で男女の関係があったからであって1年も会わずにいたら気持ちは消え去って当然だ。
それに彼みたいな人が放っておかれるはずはない。黙っていても女の子はよってくるし、あっちにも相手がいるだろう。
変に意識してた自分がアホらしくて一気に気が抜けた。
よかった、もう完全にただの幼馴染みになれたんだ。
こんなことならもっと早くに連絡をくれていたらデヒョンに不安を与えることもなかったのに。
「あのさ、ごめんね!」
「んー?」
「去年......あんなこと言って」
シウが渡米して3ヶ月頃。彼がいなくなった淋しさもあったと思う。あまのじゃくで幼稚な私は彼を突き話すことしかできず「二度と連絡しないで」と伝えて一方的に電話を切った。
幼馴染みの彼には本心もお見通しだったようで「さみしかったんだろ、わかってるよ」と笑い飛ばす。私が寂しがり屋で弱いことを誰よりも知っている彼。
その包容力に目頭がジーンと熱くなって彼がいなくなってから慣れるまでの日々が
頭のなかを駆け巡った。あの時は感情を圧し殺していただけで、辛かったのだと今になって気づく。
「泣いてんの?」
「泣いてないもん!」
「......会いたいな」
しんみりと呟く。
「そんなこと言ったって、自分で望んでニューヨークに行ったんでしょ?」
「2年なんてすぐ過ぎると思ってたんだ」
「これからまたあと1年ってことか~長いけどすぐ過ぎそう」
「帰ったら会おうよ」
帰ったらといってもまだ1年も先。遠い未来のことだから、深く考えずに「いいよ」と返事した。