Too late
「誕生日おめでとう~!」

 ジウォンは私とチョルスに向かって、そして私とチョルスはお互いにおめでとうを言い合う。
 ジウォンとチョルスどちらも多忙なせいか最後に会ったときよりも痩せている。
 美容専門学校に行っていてメイクを覚えたジウォン。元から可愛い子だけどメイクをしていると尚可愛い。
 この3人は性別の垣根を越えて仲が良いからもちろん3人でいるのが1番盛り上がるけれどちゃんとそれぞれが仲が良い。
 グループチャットで誰かが招集を呼び掛けて3人とも揃うことが今では難しいため、2人で集まる場合が多い。どの組み合わせでも大丈夫な仲だ。
 ジウォンが試験前で忙しかった時にはチョルスと2人で会った。
 ご飯を食べに行ったあとに漢江(ハンガン)を散歩した。ここだけ聞くと完全にデートだが全くもってそういうのじゃない。

 何故私たちが、デートスポットである漢江の川のほとりをゆっくりと歩きながら夕陽をバックに話すという青春映画のワンシーンを再現していたのかというと、チョルスの恋を成功へ導くためだった。
 チョルスとは個人的にも芸能活動や練習生活のことで悩みを聞いたり相談に乗っていて頻繁に連絡をとる。
 あれはたしか6月。
 相談があると電話をかけてきたチョルスの様子がいつもと違った。
 何分経っても本題に入らずどうでもいい話をしてくる。
 言えないような大変なことでも起こったのかと思って「大丈夫?」と聞くとようやく弱気な声で切り出した。

「ジウォンのこと、気になってて......」

「うん。それで?」

「えっ、あの、あいつって、彼氏とかいない......かな?」

「は?」

 この子ったら、うちのジウォンが彼氏がいながらほぼ毎日他の男と電話する女だとでも思ってるわけ?
 誰がどうみても両思いなのに真剣に不安がっているチョルス。鈍感なのかちょっと頭が悪いのか。
 ジウォンからの情報では2人は卒業して以降ほぼ毎晩、忙しい日は5分だけでも電話している。半年も経ってまだ付き合ってないのが不思議だ。
 ただ4月頃からのジウォンは忙しいみたいで2人でも月に2回ほどしか会えておらず、彼氏ができたのではと不安がっていた。
 チョルスには「絶対に彼氏いないし2人ってお似合いだよ」と伝え、協力する旨を伝えた。
 その日からジウォンとの会話で2人が進展するようにと何個もパスを出している。しかし今度はジウォンの方が「今交際をはじめても会える余裕も少ない」とチョルスとの進展を渋り始めた。一瞬交わるかのようにみえた2人の想いは見事にすれ違ってしまった。
 ジウォンは、チョルスからの好意をはっきりと自覚するほどにはアタックを受けている。
 もしチョルスに告白されたらどうするかとの問いには、「嬉しくてオッケーしちゃいそう」と。
 ジウォンの気持ちを確認した私はチョルスに告白するように念押しして、2人で会って計画を練ることとなった。
 ジウォンの大親友として彼女の理想の告白を知っている私はチョルスに持っている知識をすべて与えて、漢江にてチョルスの告白成功作戦ついて熟考した。
 
 もうひと月近くたった。今、目の前にいる2人はまだ親友のままだ。
 さすがに誕生日パーティーの時はくっついてる想定だった。この2人、私の予想を何度も裏切ってくる。
 チョルス曰く、ジウォンが試験終わりで余裕ができた頃にチョルスの同じグループの男の子が女子練習生との交際がバレて外出に厳しくなったそうだ。
 神様のいたずらが過ぎる。もどかしくもあるけど他人のことだし内心面白さがかって、シウにもこの話を共有したくてたまらない。
 今日、家にも一緒に来てなんならケーキ選びも2人で行っていた。
 なんならジウォンの理想とは逸れるけれど、今ここで告白するチャンスを作ったっていい。
 少しお酒が入って告白成功確率の高そうな絶好のタイミングを伺いながらも平然と3人での時間を楽しむ。
 
「シウオッパ(お兄さん)から連絡きたでしょ?」

「うん。そうだけど......なんで?」

「シウオッパ、相当ユリのこと恋しがってるみたいだよ。ねぇねぇ、会いに行ったら?」

 ジウォンにも私の話をしてたんだ。って、今は本当にシウはどうでもよくて、どうにかジウォンの頭のなかを恋愛モードに切り替えたい。
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