Too late
 公演後、アーティストとスタッフ全員での打ち上げでホテルへと移動した。
 総勢100名はゆうに越えるため、ホテルの大きなホールでないと収まらない。
 だだっ広い会場には10人掛けの円卓がざっと20以上はある。
 事務所の飲み会は全体ライブの公演後とハロウィンパーティーくらい。
 年に3回あるかないか、去年まで高校生だったから他の人たちがまだ楽しんでいる間に帰るのが恒例だった。
 飲み会の雰囲気もそう得意な方ではないし帰るタイミングが早く見つかってラッキーと思っていた。
 開始1時間。こういう場ではスジョンオンニたちと一緒に居る。
 みんなは呑んでいるが私は少し嗜む程度。
 先輩に注がれて2、3口しかつけていないマッコリが烏龍茶の入ったグラスの影にひっそりと佇む。
 あとでシウがうちに来るから、控えめだ。
 親友たちと3人で飲酒解禁した日から、まだ一度もお酒を開けていない。
 案外美味しくないね、と意見は合致したものの私を除く2人は呑みの雰囲気が好きだそう。
 チョルスは事務所の体型管理もあるからお酒はたまにしか呑めないと嘆いているが、ジウォンはストレス溜まった日は呑まないと眠れないらしく、酒呑みになりそうな予兆を見せている。
 あの日、私が準備していたお酒に加えて、家にお邪魔するからと2人がお酒をたくさん買ってきてくれた。その場で開けたのはほんの数本で余りはうちの冷蔵庫に置いていった。
 冷蔵庫のなかでスペースをとるだけで触れてさえいない。ジウォンに持って行かせるべきだった。
 昨晩うちに来たシウが冷蔵庫を開けて数秒固まり、「ユリ......まさか毎晩呑んでる?」と引いた様子を見せたのは面白かった。
 彼に持っていくか尋ねたが彼もあまり呑まないらしい。

「ユリってお酒呑まないんだね~」
「得意じゃない?」
 オンニたちはほろ酔いで楽しそうだ。ひたすら烏龍茶のグラスばかり手に取る私が不思議みたい。
「うーん......すごく楽しみにしてて、うちの両親も結構呑むから自分もお酒は好きだろうと思って。だけど意外と美味しくないんだなぁって。ちょっと期待しすぎてたのかも」
 分からなくもない、私も最初はそうだった、と口々に言っている。
 
「憧れてた人と付き合ってみたらそうでもなくてショック受けるみたいなね」
 一番年上のオンニは肩肘をつきクールな表情でそう言うと、ビールをグイっと喉に流す。
 オンニの一言に皆が頷く。
 酸いも甘いも知った口ぶり、オンニの見た目が華麗なせいかドラマのワンシーンを見ているかのよう。
 実際、憧れってそんなもんなのかなぁ......
 相手から好意を寄せられて付き合ったことしかない。
 憧れの人と付き合えるなんてそれでけですごく幸せだと思う。
 天にも昇る気持ちで人生が薔薇色に見えそう。
 憧れ……私の人生ではソヌだけ。
 もしもソヌの彼女になれたなら、毎日がハッピーで平和ボケしただろう。
 まあ、きっぱりと振られたしあり得ない話だけど。
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