Too late
第2話 幼馴染
「おじゃましまーす!」
卒業式の翌日、仲良し3人組でする卒業祝いは私のひとり暮らしの家で開催することになった。13時って決めてたのに2人揃って仲良く遅刻してうちにやってきたジウォンとチョルス。
「うわー部屋めっちゃ綺麗〜! 広くなったね!」
私の新居に一番最初に招いたお客さんたちは興味津々で部屋を見て回っている。
高校進学とともに私はひとり暮らしを開始した。実家だと早朝に出て行ったり真夜中に帰ったりと両親の生活リズムが乱れかねないと思って家を出た。
それと同時期にデビューしたとはいえ、韓国アイドルの宿命である精算システムのため数年間無給だった。
精算とはデビューするまでの練習生期間にかかった費用をデビュー後の稼いだお金で決済して、それが全て完了したらようやく初めてのお給料を貰えるシステム。
うちの事務所は先輩たちが輝かしい成績をおさめてくれているお陰でその事務所からデビューした私のことも見てくれる人はそれなりにいた。だから精算も昨年夏ごろに無事に受け取った。
家賃は高校3年間は両親に出してもらっていたがもう社会人だしこれからは自分で払うことになって新しい家に引っ越した。それなりの給料を貰ってるから割と良い家だ。
オートロックでセキュリティーもしっかりしてるし、なんなら2人暮らしくらいできそうな広さ。
慣れ親しんだ家ともお別れして既になんか寂しいなって思ってたところにこの2人が来てくれて良かった。年末から今に至るまで忙しかったし2人も卒業後の進路で忙しくて私の家でこうやってチキンやジャジャン麺を囲みながらわいわいするのはいつぶりだろうか。
そして今日、3人で人生初のお酒を呑む。きっと同級生たちも今頃みんな呑んでいる。
韓国は19歳を迎える年の1月1日には飲酒解禁だけど高校生の間は原則呑まない。チョルスは酒豪家系だそうでお酒を呑める日を今か今かと待ち望んでいた。
今年の年明けにジウォンとチョルスと3人で「卒業したら絶対一緒にお酒呑もうね!」と誓いも立てた。
「昨日の卒業式、デヒョンくんのファンすごかったね。まだデビュー前なのに」
ジウォンは感心したように呟く。彼女は実はデヒョンのファンで私が仲良いから紹介しようかって何回か言ったけど「カッコ良すぎて無理」とキッパリ断られた。
それに練習生をしてるチョルスにも紹介しようとしたらスンチョルからもジウォンと同じような理由で丁寧にお断りされた。
デヒョンとスンチョル、いつかデビューして知り合うだろうから先に仲良くなってても良いのにデヒョンってそんなに近寄り難い男なのか。
「同じ練習生でも俺とは大違いだな」
チョルスにだって密かにファンが数名いる。芸能人らしさってものはまだ薄いかもしれないけどチョルスもかわいい顔してるんだから。
少し自信なさげなチョルスの肩をジウォンがバシッと叩いて笑った。
「あんただって私からしたら立派な芸能人よ〜!」
私は知っている。ジウォンは実はチョルスのことが好きなのだ。
ジウォン自身もまだ気付いてないみたい。チョルスと話してるとすっごく楽しそうだしかわいい顔してるもん。
「ねぇ、あのさ......シウオッパに会いたくない?」
唐突に彼の名前が出て動揺してしまった。今完全に私に向かって言ってるよね。
まさか彼の話を出してくるとは思わず、固まった。
「2人って、付き合ってたんでしょ?」
「え?」
「気付いてたけど言わない方がいいかなって」
「そうだったんだ。なんかごめんね、気遣わせて。
でも付き合ってはない」
「あ、そうなの?」
ジウォンは優しいから、何も知らないフリしててくれたんだ。
「ほら〜言ったろ?あの感じは周りは勘違いするって」
本当は付き合ってた。
私が高校に入ってからのたった数ヶ月間だけ付き合ってて、終わりも突然だった。
私がどうしても別れたいと言って、彼は全然納得してなかった。
ジウォンとチョルスに出会って親しくなっていく途中で既に別れてたけど幼馴染に戻っても毎日連絡を取り合う仲だったからシウを2人に紹介して、4人で仲良くなった。
私とシウには特有の距離感がある。それが側から見たら付き合ってるようにしか見えないそう。
別れたのに、結局彼に甘える癖は治らなくて2人きりでいるとたまにハグしたりキスしたり……ただの友だちとは言えない関係になってしまっていた。
「別れた意味ないじゃん」「ヨリ戻そう」って何度も言われたが私は、シウのことを“好きな人“として見ることが難しかった。
彼を見るたびに罪悪感で押しつぶされそうになって
だけど彼が他の女の子にとられたらと思うと焦っちゃう。
私の心の主人は、ずっと、ずっと、
他の男の子だったから――
卒業式の翌日、仲良し3人組でする卒業祝いは私のひとり暮らしの家で開催することになった。13時って決めてたのに2人揃って仲良く遅刻してうちにやってきたジウォンとチョルス。
「うわー部屋めっちゃ綺麗〜! 広くなったね!」
私の新居に一番最初に招いたお客さんたちは興味津々で部屋を見て回っている。
高校進学とともに私はひとり暮らしを開始した。実家だと早朝に出て行ったり真夜中に帰ったりと両親の生活リズムが乱れかねないと思って家を出た。
それと同時期にデビューしたとはいえ、韓国アイドルの宿命である精算システムのため数年間無給だった。
精算とはデビューするまでの練習生期間にかかった費用をデビュー後の稼いだお金で決済して、それが全て完了したらようやく初めてのお給料を貰えるシステム。
うちの事務所は先輩たちが輝かしい成績をおさめてくれているお陰でその事務所からデビューした私のことも見てくれる人はそれなりにいた。だから精算も昨年夏ごろに無事に受け取った。
家賃は高校3年間は両親に出してもらっていたがもう社会人だしこれからは自分で払うことになって新しい家に引っ越した。それなりの給料を貰ってるから割と良い家だ。
オートロックでセキュリティーもしっかりしてるし、なんなら2人暮らしくらいできそうな広さ。
慣れ親しんだ家ともお別れして既になんか寂しいなって思ってたところにこの2人が来てくれて良かった。年末から今に至るまで忙しかったし2人も卒業後の進路で忙しくて私の家でこうやってチキンやジャジャン麺を囲みながらわいわいするのはいつぶりだろうか。
そして今日、3人で人生初のお酒を呑む。きっと同級生たちも今頃みんな呑んでいる。
韓国は19歳を迎える年の1月1日には飲酒解禁だけど高校生の間は原則呑まない。チョルスは酒豪家系だそうでお酒を呑める日を今か今かと待ち望んでいた。
今年の年明けにジウォンとチョルスと3人で「卒業したら絶対一緒にお酒呑もうね!」と誓いも立てた。
「昨日の卒業式、デヒョンくんのファンすごかったね。まだデビュー前なのに」
ジウォンは感心したように呟く。彼女は実はデヒョンのファンで私が仲良いから紹介しようかって何回か言ったけど「カッコ良すぎて無理」とキッパリ断られた。
それに練習生をしてるチョルスにも紹介しようとしたらスンチョルからもジウォンと同じような理由で丁寧にお断りされた。
デヒョンとスンチョル、いつかデビューして知り合うだろうから先に仲良くなってても良いのにデヒョンってそんなに近寄り難い男なのか。
「同じ練習生でも俺とは大違いだな」
チョルスにだって密かにファンが数名いる。芸能人らしさってものはまだ薄いかもしれないけどチョルスもかわいい顔してるんだから。
少し自信なさげなチョルスの肩をジウォンがバシッと叩いて笑った。
「あんただって私からしたら立派な芸能人よ〜!」
私は知っている。ジウォンは実はチョルスのことが好きなのだ。
ジウォン自身もまだ気付いてないみたい。チョルスと話してるとすっごく楽しそうだしかわいい顔してるもん。
「ねぇ、あのさ......シウオッパに会いたくない?」
唐突に彼の名前が出て動揺してしまった。今完全に私に向かって言ってるよね。
まさか彼の話を出してくるとは思わず、固まった。
「2人って、付き合ってたんでしょ?」
「え?」
「気付いてたけど言わない方がいいかなって」
「そうだったんだ。なんかごめんね、気遣わせて。
でも付き合ってはない」
「あ、そうなの?」
ジウォンは優しいから、何も知らないフリしててくれたんだ。
「ほら〜言ったろ?あの感じは周りは勘違いするって」
本当は付き合ってた。
私が高校に入ってからのたった数ヶ月間だけ付き合ってて、終わりも突然だった。
私がどうしても別れたいと言って、彼は全然納得してなかった。
ジウォンとチョルスに出会って親しくなっていく途中で既に別れてたけど幼馴染に戻っても毎日連絡を取り合う仲だったからシウを2人に紹介して、4人で仲良くなった。
私とシウには特有の距離感がある。それが側から見たら付き合ってるようにしか見えないそう。
別れたのに、結局彼に甘える癖は治らなくて2人きりでいるとたまにハグしたりキスしたり……ただの友だちとは言えない関係になってしまっていた。
「別れた意味ないじゃん」「ヨリ戻そう」って何度も言われたが私は、シウのことを“好きな人“として見ることが難しかった。
彼を見るたびに罪悪感で押しつぶされそうになって
だけど彼が他の女の子にとられたらと思うと焦っちゃう。
私の心の主人は、ずっと、ずっと、
他の男の子だったから――