Too late
本物
コラボ活動スタートまで3日。
今日は共に活動するお兄さんと数週間ぶりに顔を合わせて、宣伝映像の撮影と歌練習。
撮影は早朝から行われたがお兄さんは昨晩遅くにバンコクから帰国したばかり。
睡眠時間2時間ほどでスタジオに来たそうで、大きなあくびをしている。
彼のためにも出来る限り時間を巻きたい。
ツーショット撮影のあとに、一人ずつの撮影。
こういう場合、順番は話し合って決めることが大半だが、今回ばかりは問答無用でお兄さんに先を譲った。
「もしかして気、遣ってくれた!?」
「いえいえ、今日はこのあとスケジュール無いので」
ありがとうね、と私に微笑む彼。
笑顔もなんだか痛々しい。
撮影のため、普段以上に密着する。
顔を接近させると彼の疲労が直に感じられる。
世間から赤子のようだと形容される白くてハリのある肌はボロボロで、目も少し充血している。
写真は修正が効くし、真っ白のライトを焚いて厚化粧をして、と万全の対策をするためファンに見せる姿はいつもの”かっこいいオッパ”だ。
素っぴんの時間のほうが短い上にここ1年以上は睡眠時間も長くは取れていないに違いない。
いくら若くて体力があると言っても体は悲鳴をあげてる。
疲れきっているだろうに私やスタッフには笑顔を絶やさず接する。
合間の誰も見ていないような瞬間に彼が小さなため息をついて顔を濁らせているのを目撃した。
撮影後、社内の練習室にて歌を合わせてみる。
練習室で、マイクを通しての歌唱。
日々の練習と先生からの言葉で自信を培った私は、もっと堂々と歌える想定をしていた。
しかし、現場に来て疲労困憊のお兄さんの姿を見てから心持ちが変わった。
私がうまく歌えたら通しの練習も早めに切り上げれる。その一心で力が入ってしまう。
もっと歌えると思っていた。
自分的に納得のいくものではなかった。
最後のワンフレーズが終わってから音楽が鳴り止む瞬間がくるのを恐れる。
きっと、もう一回いきましょうか、とスタッフに言われてしまう。
自分のプレッシャー耐性の無さに落胆した。
エンドロールまで流れて、スピーカーからの音楽が止んだ瞬間、彼が私に両手の平を見せてハイタッチを求めた。
予想した反応との違いに動揺しつつも彼に応える。
手がバチンと大きな音をたてて重なる。
「すごい練習したでしょ! めっちゃ上手くなってる!」
今日一番の大きな声をあげてようやく心からの笑顔を見せる。
「よかった~!」
肩の荷が下りてその場に立ったまんまうなだれる。
ここ1ヶ月の努力が報われた。
見守っていたマネージャーも安堵した様子で、表情が堅かったからそれだけ治したらいいと言った。
表情どころか喉も脚も、そしてマイクを握る手もガッチガチだったがそれでも充分な歌だったらしい。
ステージの演出を教わって何度か通し、予定よりもかなり早く練習を終えた。
心晴れやかに「おつかれさまです」と挨拶を交わして事務所をあとにした。
今日は共に活動するお兄さんと数週間ぶりに顔を合わせて、宣伝映像の撮影と歌練習。
撮影は早朝から行われたがお兄さんは昨晩遅くにバンコクから帰国したばかり。
睡眠時間2時間ほどでスタジオに来たそうで、大きなあくびをしている。
彼のためにも出来る限り時間を巻きたい。
ツーショット撮影のあとに、一人ずつの撮影。
こういう場合、順番は話し合って決めることが大半だが、今回ばかりは問答無用でお兄さんに先を譲った。
「もしかして気、遣ってくれた!?」
「いえいえ、今日はこのあとスケジュール無いので」
ありがとうね、と私に微笑む彼。
笑顔もなんだか痛々しい。
撮影のため、普段以上に密着する。
顔を接近させると彼の疲労が直に感じられる。
世間から赤子のようだと形容される白くてハリのある肌はボロボロで、目も少し充血している。
写真は修正が効くし、真っ白のライトを焚いて厚化粧をして、と万全の対策をするためファンに見せる姿はいつもの”かっこいいオッパ”だ。
素っぴんの時間のほうが短い上にここ1年以上は睡眠時間も長くは取れていないに違いない。
いくら若くて体力があると言っても体は悲鳴をあげてる。
疲れきっているだろうに私やスタッフには笑顔を絶やさず接する。
合間の誰も見ていないような瞬間に彼が小さなため息をついて顔を濁らせているのを目撃した。
撮影後、社内の練習室にて歌を合わせてみる。
練習室で、マイクを通しての歌唱。
日々の練習と先生からの言葉で自信を培った私は、もっと堂々と歌える想定をしていた。
しかし、現場に来て疲労困憊のお兄さんの姿を見てから心持ちが変わった。
私がうまく歌えたら通しの練習も早めに切り上げれる。その一心で力が入ってしまう。
もっと歌えると思っていた。
自分的に納得のいくものではなかった。
最後のワンフレーズが終わってから音楽が鳴り止む瞬間がくるのを恐れる。
きっと、もう一回いきましょうか、とスタッフに言われてしまう。
自分のプレッシャー耐性の無さに落胆した。
エンドロールまで流れて、スピーカーからの音楽が止んだ瞬間、彼が私に両手の平を見せてハイタッチを求めた。
予想した反応との違いに動揺しつつも彼に応える。
手がバチンと大きな音をたてて重なる。
「すごい練習したでしょ! めっちゃ上手くなってる!」
今日一番の大きな声をあげてようやく心からの笑顔を見せる。
「よかった~!」
肩の荷が下りてその場に立ったまんまうなだれる。
ここ1ヶ月の努力が報われた。
見守っていたマネージャーも安堵した様子で、表情が堅かったからそれだけ治したらいいと言った。
表情どころか喉も脚も、そしてマイクを握る手もガッチガチだったがそれでも充分な歌だったらしい。
ステージの演出を教わって何度か通し、予定よりもかなり早く練習を終えた。
心晴れやかに「おつかれさまです」と挨拶を交わして事務所をあとにした。