Too late
午後6時過ぎ。これからジウォン、チョルスと会う。それに、シウも——————
私との再会を機に、シウ本人からジウォンにも帰国したと知らせた。
当然、4人でのグループチャットも盛んになり、会うことになる。
シウと私は誘いに乗るだけで、再会を楽しみにしているのは残りの2名。
彼らに事情を言えるわけもなく、誘いを拒みはしなかった。
ジウォンはこれまで通り私の家を集合場所に提案したが、チョルスがシウの家に行きたいと言った。
現在のシウの住まいはお父さんの暮らす城北洞の邸宅。
城北洞は韓国の高級住宅街。
AJグループ代表の家ともなればさぞ立派な豪邸だと容易に想像がつく。
1年ぶりの再会をしたあの日、彼が打ち明けた身の上話には続きがある。
シウは本来、帰国後もお母さんと住んでいた実家に戻る予定だった。
しかし、韓国に降り立ったその足で半ば強制的に城北洞の豪邸へと連れていかれることに。
お母さんには「最近、うちの水漏れが酷いからしばらくあの人の所にいて」とそれらしい理由を言われ、受け入れた。
その家には、彼のお父さんだけでなく新しい家族も住む。
シウの父親は2年ほど前に再婚していたのだ。
一回り以上年の離れた奥さんで現在妊娠中、彼女もまた離婚歴があり中学生になる男の子の連れ子がいる。
再婚を決めた際、婚前契約を結んでシウに会社を継がせることに奥さんからの完全な同意を得ている。
奥さんはシウに好意的な態度だが、それが逆に信用ならないと彼は愚痴る。
後継の自分に気に入られたほうが得だからそうしているんじゃないか、と。
彼の悩みはそれだけに尽きない。
家にはお手伝いさんや執事、家族以外の人が常に複数人いる状態。
落ち着かないし居心地が悪いと言って、あの日も私の家から帰りたがらなかった。
同情心のあまり、つい家に泊めてしまいそうになった。
たとえドラマのように裕福な生活であっても、血の繋がらない身内と赤の他人も出入りする豪邸で突然暮らすことにストレスを感じない人間なんてそういないだろう。
帰国して1週間、彼が時差ボケを直すのと口を韓国語に慣らすことに時間を費やしている間に、父親からお使いを頼まれるようになった。
家には居たくない、その一心で始めた軽い手伝い。
はじめは簡単な業務ばかりだったが日を追うごとに複雑化していき、会社に顔を出す必要に迫られた。
やがて毎日会社に行く環境が整ってしまった。
彼はようやく、父親が自分を城北洞に住まわせる魂胆に気づく。
父親の策略、シウを目の届く場所に置いて会社に呼びつけやすい体制をつくり後継になる意志を固めさせることだった。
一連の流れを説明すると、「酷いと思わない?」と切ない表情で訴えた。
彼が傷ついているのは父親の策にものの見事に嵌まってしまったからではない。
彼にとって“父親“は、さほど重要じゃなかった。
私との再会を機に、シウ本人からジウォンにも帰国したと知らせた。
当然、4人でのグループチャットも盛んになり、会うことになる。
シウと私は誘いに乗るだけで、再会を楽しみにしているのは残りの2名。
彼らに事情を言えるわけもなく、誘いを拒みはしなかった。
ジウォンはこれまで通り私の家を集合場所に提案したが、チョルスがシウの家に行きたいと言った。
現在のシウの住まいはお父さんの暮らす城北洞の邸宅。
城北洞は韓国の高級住宅街。
AJグループ代表の家ともなればさぞ立派な豪邸だと容易に想像がつく。
1年ぶりの再会をしたあの日、彼が打ち明けた身の上話には続きがある。
シウは本来、帰国後もお母さんと住んでいた実家に戻る予定だった。
しかし、韓国に降り立ったその足で半ば強制的に城北洞の豪邸へと連れていかれることに。
お母さんには「最近、うちの水漏れが酷いからしばらくあの人の所にいて」とそれらしい理由を言われ、受け入れた。
その家には、彼のお父さんだけでなく新しい家族も住む。
シウの父親は2年ほど前に再婚していたのだ。
一回り以上年の離れた奥さんで現在妊娠中、彼女もまた離婚歴があり中学生になる男の子の連れ子がいる。
再婚を決めた際、婚前契約を結んでシウに会社を継がせることに奥さんからの完全な同意を得ている。
奥さんはシウに好意的な態度だが、それが逆に信用ならないと彼は愚痴る。
後継の自分に気に入られたほうが得だからそうしているんじゃないか、と。
彼の悩みはそれだけに尽きない。
家にはお手伝いさんや執事、家族以外の人が常に複数人いる状態。
落ち着かないし居心地が悪いと言って、あの日も私の家から帰りたがらなかった。
同情心のあまり、つい家に泊めてしまいそうになった。
たとえドラマのように裕福な生活であっても、血の繋がらない身内と赤の他人も出入りする豪邸で突然暮らすことにストレスを感じない人間なんてそういないだろう。
帰国して1週間、彼が時差ボケを直すのと口を韓国語に慣らすことに時間を費やしている間に、父親からお使いを頼まれるようになった。
家には居たくない、その一心で始めた軽い手伝い。
はじめは簡単な業務ばかりだったが日を追うごとに複雑化していき、会社に顔を出す必要に迫られた。
やがて毎日会社に行く環境が整ってしまった。
彼はようやく、父親が自分を城北洞に住まわせる魂胆に気づく。
父親の策略、シウを目の届く場所に置いて会社に呼びつけやすい体制をつくり後継になる意志を固めさせることだった。
一連の流れを説明すると、「酷いと思わない?」と切ない表情で訴えた。
彼が傷ついているのは父親の策にものの見事に嵌まってしまったからではない。
彼にとって“父親“は、さほど重要じゃなかった。