Too late
門の中に入ったら敷地全体が一望できる。
奥にどっしりと待ち構えているのは家というよりも美術館に近い外観の建物。
2階建てで、横長に広がる。
そこに辿り着くまでにも敷地内には噴水や銅像やら、ところどころに散らばったガーデニング。とても個人宅とは思えない。
目の前の大豪邸に怖じ気づくあまり、シートに深く体を埋めた。
なんともなさそうな顔で車をゆっくりと前進させる彼の腕を強引に掴んで引き留める。
「ちょっ、ちょっと待って、本当にお父様に許可とらなくていいの?」
「なんで? マジで誰も気づかないと思うよ。それに、友達連れてくるぐらいいいだろ」
平然と答える。
妙に後ろが静かだ。
チラッと様子を見たら、口をあんぐりと開けて手を握りしめ固まっている。
もはや怯えているようにも見える。
「シウ、ふたりが驚いちゃってる」
ぼそっと耳打ちする。彼はうしろを確認して、くすっと笑った。
彼は私たちの動揺を半分おもしろがっている。
車を玄関近くまで寄せ、降りていいよと言った。
彼一人、降りてしまった。
「............」
残った者は誰も動こうとしない。
シウが車内を覗き混んだ。
「どうした? 早く降りて」
本当に入っていいのか、頭をフル回転させていると助手席側のドアが外から開けられた。
「いらっしゃいませ」
どこからともなく現れたスーツ姿の人がにこやかに私を見ている。
ゆっくりと足を下ろし、敷地に降り立った。
「ほら、降りなさーい」
シウに唆され、チョルスとジウォンはぞろぞろと出てくる。
スーツ姿の人はシウが寄って来るとお辞儀をした。
「おかえりなさいませ、お坊っちゃま」
ドラマで見るやつ......!
本当にお坊っちゃまって呼ばれるんだ。
幼馴染みが幼馴染みではないようで、自分がここに居ながらも居ないような、別の場所から情景を俯瞰している気分だ。
「お疲れさまです。車よろしく」
「かしこまりました」
「あ、もう親父いる?」
「今日はまだ会社にいらっしゃいます」
「そうか」
車の鍵をその人に渡すと玄関へ向かった。
私たちもあとに続く。
立ちはだかる扉は首を直角にし見上げるほど背が高い。
重厚感がある。
シウがロックを解除して玄関を開けた。
もう充分なほど強烈な印象を3人の頭に刻んでいた彼の住まいは、そこから更に私たちを驚かせた。
一歩入れば広い玄関、天井は高くて声、足音、何もかもが反響する。
靴との摩擦音に足元を見たら、一面を覆う大理石は新居のごとく白い輝き。
日々、家政婦の手によって隅々まで磨きあげられているところが目に浮かぶ。
心なしか、私の履き古したスニーカーが居心地悪そうにしている。
真っ先に目に入るのは螺旋階段と、その階段にぐるり囲まれて存在感を放つ真っ白のグランドピアノ。
お金持ちは部屋ではなく玄関に楽器を置く。
自分の価値観とはかけ離れていてびっくり。
私の実家にもピアノはあるけどちゃんと専用の部屋だ。
グランドピアノはすごく場所をとるからピアノと本棚しか置いていない。
しかしここではそれほど大きくはないように見える。
それだけこのフロアが広い。
こんなところで弾きそうにもないしただの高級なオブジェの可能性もある。
他には部屋に繋がっているであろう複数のドアが点在する。
大きく取ってある空間。
ぽつりぽつりと置物があるだけ。
ただの廊下にしても異様な広さ。
「俺の部屋2階だから」
靴を脱ぎ捨ててスリッパに足を入れたら、戸惑う私たちの様子なんぞ気にも止めずに階段のほうへ。
この薄汚れたスニーカーを玄関に置いていくことさえ恥ずかしいが、仕方なく靴を脱いで彼の背中を追いかけた。
奥にどっしりと待ち構えているのは家というよりも美術館に近い外観の建物。
2階建てで、横長に広がる。
そこに辿り着くまでにも敷地内には噴水や銅像やら、ところどころに散らばったガーデニング。とても個人宅とは思えない。
目の前の大豪邸に怖じ気づくあまり、シートに深く体を埋めた。
なんともなさそうな顔で車をゆっくりと前進させる彼の腕を強引に掴んで引き留める。
「ちょっ、ちょっと待って、本当にお父様に許可とらなくていいの?」
「なんで? マジで誰も気づかないと思うよ。それに、友達連れてくるぐらいいいだろ」
平然と答える。
妙に後ろが静かだ。
チラッと様子を見たら、口をあんぐりと開けて手を握りしめ固まっている。
もはや怯えているようにも見える。
「シウ、ふたりが驚いちゃってる」
ぼそっと耳打ちする。彼はうしろを確認して、くすっと笑った。
彼は私たちの動揺を半分おもしろがっている。
車を玄関近くまで寄せ、降りていいよと言った。
彼一人、降りてしまった。
「............」
残った者は誰も動こうとしない。
シウが車内を覗き混んだ。
「どうした? 早く降りて」
本当に入っていいのか、頭をフル回転させていると助手席側のドアが外から開けられた。
「いらっしゃいませ」
どこからともなく現れたスーツ姿の人がにこやかに私を見ている。
ゆっくりと足を下ろし、敷地に降り立った。
「ほら、降りなさーい」
シウに唆され、チョルスとジウォンはぞろぞろと出てくる。
スーツ姿の人はシウが寄って来るとお辞儀をした。
「おかえりなさいませ、お坊っちゃま」
ドラマで見るやつ......!
本当にお坊っちゃまって呼ばれるんだ。
幼馴染みが幼馴染みではないようで、自分がここに居ながらも居ないような、別の場所から情景を俯瞰している気分だ。
「お疲れさまです。車よろしく」
「かしこまりました」
「あ、もう親父いる?」
「今日はまだ会社にいらっしゃいます」
「そうか」
車の鍵をその人に渡すと玄関へ向かった。
私たちもあとに続く。
立ちはだかる扉は首を直角にし見上げるほど背が高い。
重厚感がある。
シウがロックを解除して玄関を開けた。
もう充分なほど強烈な印象を3人の頭に刻んでいた彼の住まいは、そこから更に私たちを驚かせた。
一歩入れば広い玄関、天井は高くて声、足音、何もかもが反響する。
靴との摩擦音に足元を見たら、一面を覆う大理石は新居のごとく白い輝き。
日々、家政婦の手によって隅々まで磨きあげられているところが目に浮かぶ。
心なしか、私の履き古したスニーカーが居心地悪そうにしている。
真っ先に目に入るのは螺旋階段と、その階段にぐるり囲まれて存在感を放つ真っ白のグランドピアノ。
お金持ちは部屋ではなく玄関に楽器を置く。
自分の価値観とはかけ離れていてびっくり。
私の実家にもピアノはあるけどちゃんと専用の部屋だ。
グランドピアノはすごく場所をとるからピアノと本棚しか置いていない。
しかしここではそれほど大きくはないように見える。
それだけこのフロアが広い。
こんなところで弾きそうにもないしただの高級なオブジェの可能性もある。
他には部屋に繋がっているであろう複数のドアが点在する。
大きく取ってある空間。
ぽつりぽつりと置物があるだけ。
ただの廊下にしても異様な広さ。
「俺の部屋2階だから」
靴を脱ぎ捨ててスリッパに足を入れたら、戸惑う私たちの様子なんぞ気にも止めずに階段のほうへ。
この薄汚れたスニーカーを玄関に置いていくことさえ恥ずかしいが、仕方なく靴を脱いで彼の背中を追いかけた。