Too late
「昨日の卒業式、デヒョンくんのファンすごかったね。まだデビュー前なのに」
 ジウォンは感心したように呟く。
 彼女は実はデヒョンの隠れファン。
 紹介しようかと何度言っても「カッコ良すぎて無理」とキッパリ断られる。
 練習生をしてるチョルスにも紹介しようとしたらチョルスもジウォンと同じ理由で断った。
 デヒョンとチョルス、いつかデビューして知り合うだろうから先に仲良くなってても良いのにデヒョンってそんなに近寄り難い男なのか。

「同じ練習生でも俺とは大違いだな」

 チョルスにだって密かにファンが数名いる。芸能人らしさってものはまだ薄いかもしれないけどチョルスもかわいい顔してるんだから。
 少し自信なさげなチョルスの肩をジウォンがバシッと叩いて笑った。

「あんただって私からしたら立派な芸能人よ〜!」

 ジウォンはチョルスのことが好きだ。
 ジウォン自身もまだ気付いてないみたい。チョルスと話してるとすっごく楽しそうで乙女の顔をしている。

「ねぇ、あのさ......シウオッパに会いたくない?」

 唐突に彼の名前が出て動揺してしまった。今完全に私に向かって言ってるよね。
 まさか彼の話を出してくるとは思わず、固まった。

「2人って、付き合ってたんでしょ?」
「え?」
「気付いてたけど言わない方がいいかなって」
「そうだったんだ。なんかごめんね、気遣わせちゃって。でも付き合ってはないの」
「あ、そうなの?」

 ジウォンは優しいから、何も知らないフリしててくれたんだ。

「ほら〜言ったろ?あの感じは周りは勘違いするって」

 本当は付き合っていた。
 私が高校に入ってから数ヶ月間。
 付き合い始めたのも突然だったが終わりはもっと突然だった。
 ある事件が起きて、罪悪感に苛まれた私は今すぐに別れたいと言い出した。が、彼はすぐには納得せず、「別れないなら連絡先ブロックする」と言ったら渋々別れてくれた。
 ジウォンとチョルスに出会って親しくなっていく途中で既に別れていたが、幼馴染に戻ったあとも毎日連絡を取り合う仲に変わりはなかった。
 シウを2人に紹介して、4人で仲良くなった。
 私とシウには特有の距離感がある。それが側から見たら付き合ってるようにしか見えないそう。
 別れたのに、結局彼に甘える癖は治らなくて……ただの友だちとは言えない関係になってしまっていた。
 「別れた意味ないじゃん」「ヨリ戻そう」って何度も言われたが私は、シウのことを“好きな人“として見ることが難しかった。
 彼を見るたびに罪悪感で押しつぶされそうになって
だけど彼が他の女の子にとられたらと思うと焦っちゃう。

 私の心の主人は、ずっと、ずっと、他の人——
< 7 / 97 >

この作品をシェア

pagetop