Too late
「先生、勘違いじゃないですか......? 私のこと、好きになるはずがないと思うんです」
あの日の彼の言葉がフラッシュバックする。
火照っていた頬は急激に冷め、素に戻った。
「え、なんで?」
「だって......あそこまで言った相手を、そのあとに好きになるなんておかしいですよ」
“純粋だと思ってた”
“騙されたよ”
“そうやって男遊びしてきたんだな”
あの時は押し込めるしかなかった苛立ちが今になって心の奥底から沸々と込み上げる。
「本当に、あの時はどうかしてたんだ。ごめんね。
ただ、今の気持ちは嘘なんかじゃない。最初は自分でも信じられなかった。」
「そんなの聞いたって信じられない......あんなに私のこと悪く言ってたくせに......」
「ごめん、本当に大人げないけど......まさかあいつと付き合うとは思ってなくて、ショックだったっていうか」
それなら、あれはもしかして......
「先生、あの時にはもう私のこと気になってたんですか?」
「えっ......」
図星で動揺しているというよりも、当時の本音を他人から気づかされて一驚を喫している。
「いや」
「えっ」
「マジで?」
「そんな......」
ひとりでに自問自答を繰り返し、最後には絶句した。
この人、自分の感情にまで鈍感なの?
さっきまでの大人の余裕は一体何処へ。
もし本当に彼があの時には私のことが気になっていたとしたら、あれは嫉妬が起因した故の発言ということになる。
彼への当てつけでデヒョンを選んだのは、あながち間違いではなかったのか......
だけどもっと早くに項を奏してほしかった。
今じゃない。
ママが、男の人っていつまで経っても子どもだと言っていた。
ようやくその意味を知る。
漏れたため息を隠す気もない。
手に届かない、遠くに感じていたからこそより輝いて見えた。
手に届くところにいると案外、こんなもんか。
いや、ちょっと調子に乗っちゃってる自分がいる。
「まだ......あいつのこと好きなの?」
先生でも少女漫画みたいな台詞って言うんだ。
クスッと笑ってしまったのを咳払いで隠す。
「もうさすがに、過去のことですよ」
「そっか......あと、この際だから聞くけど、AJの御曹司とは何もないの?」
突然出てきたAJの話題に焦って、寝ていた体を起こす。
リク先生と親しくなって、仕事のことから些細な日常の出来事や家族の話まで、色んな話をしてきた。
今の今まで一切そのことには触れられなかったから、社内の上の人たちだけがシウと私の話を知っているのだと思っていた。
最近になって誰かから聞いたとか?
なんと答えるべきか、口ごもる。
「何の話ですか? ていうか、誰から聞きました?」
質問に対し質問で返す。
「え、なんか社員は結構みんな知ってるよ......YUライブの打ち上げのときにユリがナンパしたって」
「はぁ!?」
話が錯綜している。
表舞台に立つ身である以上こういうことには慣れているが、ナンパ“した”ことになっているのは不服だ。
「なんで私がシウをナンパしないといけないんですか、ほんっと、困ったもんだわ」
反応がない。
幼馴染みの名を出してしまったことに、すぐには気づかなかった。
「シウ......?」
「あっ......」
あの日の彼の言葉がフラッシュバックする。
火照っていた頬は急激に冷め、素に戻った。
「え、なんで?」
「だって......あそこまで言った相手を、そのあとに好きになるなんておかしいですよ」
“純粋だと思ってた”
“騙されたよ”
“そうやって男遊びしてきたんだな”
あの時は押し込めるしかなかった苛立ちが今になって心の奥底から沸々と込み上げる。
「本当に、あの時はどうかしてたんだ。ごめんね。
ただ、今の気持ちは嘘なんかじゃない。最初は自分でも信じられなかった。」
「そんなの聞いたって信じられない......あんなに私のこと悪く言ってたくせに......」
「ごめん、本当に大人げないけど......まさかあいつと付き合うとは思ってなくて、ショックだったっていうか」
それなら、あれはもしかして......
「先生、あの時にはもう私のこと気になってたんですか?」
「えっ......」
図星で動揺しているというよりも、当時の本音を他人から気づかされて一驚を喫している。
「いや」
「えっ」
「マジで?」
「そんな......」
ひとりでに自問自答を繰り返し、最後には絶句した。
この人、自分の感情にまで鈍感なの?
さっきまでの大人の余裕は一体何処へ。
もし本当に彼があの時には私のことが気になっていたとしたら、あれは嫉妬が起因した故の発言ということになる。
彼への当てつけでデヒョンを選んだのは、あながち間違いではなかったのか......
だけどもっと早くに項を奏してほしかった。
今じゃない。
ママが、男の人っていつまで経っても子どもだと言っていた。
ようやくその意味を知る。
漏れたため息を隠す気もない。
手に届かない、遠くに感じていたからこそより輝いて見えた。
手に届くところにいると案外、こんなもんか。
いや、ちょっと調子に乗っちゃってる自分がいる。
「まだ......あいつのこと好きなの?」
先生でも少女漫画みたいな台詞って言うんだ。
クスッと笑ってしまったのを咳払いで隠す。
「もうさすがに、過去のことですよ」
「そっか......あと、この際だから聞くけど、AJの御曹司とは何もないの?」
突然出てきたAJの話題に焦って、寝ていた体を起こす。
リク先生と親しくなって、仕事のことから些細な日常の出来事や家族の話まで、色んな話をしてきた。
今の今まで一切そのことには触れられなかったから、社内の上の人たちだけがシウと私の話を知っているのだと思っていた。
最近になって誰かから聞いたとか?
なんと答えるべきか、口ごもる。
「何の話ですか? ていうか、誰から聞きました?」
質問に対し質問で返す。
「え、なんか社員は結構みんな知ってるよ......YUライブの打ち上げのときにユリがナンパしたって」
「はぁ!?」
話が錯綜している。
表舞台に立つ身である以上こういうことには慣れているが、ナンパ“した”ことになっているのは不服だ。
「なんで私がシウをナンパしないといけないんですか、ほんっと、困ったもんだわ」
反応がない。
幼馴染みの名を出してしまったことに、すぐには気づかなかった。
「シウ......?」
「あっ......」